草木染めの紫
染めたい色「紫」から考えた時の、使う天然染料、植物、媒染について書きます。
鮮やかな本紫ではなくて、赤紫や青紫や少し暗い、味のある曖昧な色を染めたいです。
目次
紫色が染まる染料
染料店で販売している乾燥染料では、紫根、ログウッド、蘇芳、五倍子、ラックなどが紫っぽい色に染まります。あとは、コチニールや茜のように赤系の染料を鉄媒染すると紫系になることが多いです。
身近な食品では、ブルーベリーの実、ぶどうの皮、桑の実、紫キャベツ、黒豆などもありますが、アントシアニン色素なので色落ちしやすいです。
※アントシアニンについてはこちら→ アントシアニン色素で染めたい
あと、特殊なものとしては、藍の生葉を使った赤紫染めという手法、ウメノキゴケという苔染めもあります。
赤と青を重ねれば紫色になるので、藍染をして、それに赤系の染料を重ね染めするのが一番よさそうな気がします。(藍染のハードルが高すぎて進んでいませんが、そろそろやってみたいです)
乾燥染料で紫色
紫根
草木染めで紫といえば、「紫根」です。伝統的な染料で、ムラサキという草の根っこ部分が染料になります。染料店に軟紫根が売っています。栽培がむずかしく、日本産の紫草はなかなか手に入らないかと思います。
気温の低い冬に染めるのがおすすめの染料です。色素はシコニン。熱に弱いです。アルコールで抽出するとよく色素が出るので消毒用エタノールを使っていたのですが、このご時世、当面アルコール抽出はできなそうです。
染め方によって、赤紫や青紫に染めることができます。染料の状態の問題なのか、染め方が悪いのか、自分で染めると布に変なニオイが残ってしまうのが課題です。
※紫根のニオイの話はこちら→ 紫根染めと紫根の臭い問題(未解決)
※硬紫根でマフラーを染めた話はこちら→ 紫草染めウールマフラー染め直し
ログウッド
ログウッドは、薄いと青紫色、濃いと紺色に染まります。マメ科の木の芯材で、乾燥チップや液体染料が染料店に売っています。
無媒染ではベージュ色なのですが、アルミ媒染すると、青紫~紺色に発色します。
蘇芳
スオウは、酸性で赤っぽく、アルカリ性で青っぽく、さらに媒染を変えれば、いろいろな紫色が染まります。とても美しい色で濃く染まるのですが、草木染めの中でも色落ちしやすい染料です。退色の仕方も、全体的に色が薄まるのではなく、一部色が抜けるようになりやすいです。
五倍子
五倍子は、ヌルデという木の虫こぶで、暗い紫色が染まります。光加減で灰色にも紫にも見えるような色です。染料店に乾燥染料が売っていて、価格もお手頃で、使い勝手がよいと思います。
※五倍子染めの詳細はこちら→ 生の五倍子で染め直し
ラックダイ
ラックは動物染料です。ビルマネムなどの木につくカイガラ虫の分泌物から取れる色素です。赤~赤紫っぽく染まります。液体染料やパウダーが染料店で売っていて、少量で濃く染まります。紫系に染まる染料の中では、色落ちしにくいです。
※ラック染めの詳細はこちら→ 天然染料ラックでウール靴下を染めてみる
赤系の媒染替えで紫色
コチニール
コチニールは、サボテンに付くカイガラムシで、動物染料。食品着色料でもあります。染料店で石粒みたいな形の虫が売っています。アルミ媒染ではピンクですが、銅媒染や鉄媒染すると紫色になります。
※コチニール染めの話はこちら→ 麻生地のコチニール染め
セイヨウアカネ
セイヨウアカネで鉄媒染すると紫色になりました。茜には日本茜、インドアカネ、セイヨウアカネがあって、インドアカネやセイヨウアカネが染料店などで売っています。
身近な食品で紫色
身近なもので染める紫色は、たいがいアントシアニン色素で、色落ちしやすいです。特に赤寄りの色が抜けやすい気がします。
ブルーベリーの実
ブルーベリーの実で染めると、青紫色に染まります。退色は速いです。
お酢などで酸性にすると赤みが増しますが、赤みは青みよりも色が飛びやすい気がします。
※ブルーベリー染めの詳細はこちら→ ブルーベリーの実で染まる色と色変化テスト
ぶどうの皮
巨峰の皮から染めた木綿巾着。ぶどう色になります。退色は速いです。
※巨峰染めの詳細はこちら→ 巨峰の皮で食べ染め、ぶどう色
桑の実染め
桑の実(マルベリー)染め。左がシルク、右が木綿のストール。木綿は五倍子下地をしたもので、薄いですがいい色です。退色は速いです。
※桑の実染め詳細はこちら→ 五倍子下地でマルベリー染め
紫キャベツ染め
少量をテスト的に染めただけですが、シルクが青紫に染まりました。青みが強く、ブルーベリーの色に似ていました。
※紫キャベツ染めを試した話はこちら→ 紫キャベツの餃子染め
お花染め
アメジストセージのお花から色素をとってシルク染めたもの。お花染めも、たいがいアントシアニン系です。
※セージ染めの話はこちら→ セージで染物。ハーブ染め・お花染め
身近な植物で紫色
秋によく見かける、ヨウシュヤマゴボウの実でも紫に染まります。私は怖がりすぎて失敗しました。
※失敗した話はこちら→ ヨウシュヤマゴボウ染めテスト(失敗)
特殊な染め方で紫色
藍で紫色
藍の生葉染めは普通は水色に染めるのですが、やり方を変えるとシルクが赤紫色にも染まります。でもその方法がむずかしくて、なかなかうまく染められません。
※赤紫染めの話はこちら→ 藍の赤紫染めのこと
ウメノキゴケ染め
ウメノキゴケは樹木に付く苔です。アンモニア水などを使って色素を取り出して染めます。うまくできれば濃い赤紫色を染めることができます。染める時もアンモニアがかなり臭いので、屋外で染められる場所が必要です。
※ウメノキゴケ染めの詳細はこちら→ ウメノキゴケのアンモニア発酵で紫色を染める
紫色の草木染めで思うこと
できたら身近な植物で、できればアルミ媒染か鉄媒染で紫色を染めてみたいのですが、なかなかありません。
薄い色が好きで、コットンを染めたいのですが、「薄い色を染める」のも「木綿を染める」の両方とも色が飛びやすく、どう染めるべきなのか悩み中です。
あと染めたことがない紫色としては、貝紫(これも臭いらしい)と、ビーツ(ボルシチに入れる赤いカブみたいな野菜)やウチワサボテンのベタレイン色素が気になります。
※不明点やアドバイスがありましたら、お問い合わせフォームもしくはインスタグラムから、お気軽にお知らせください。