毛糸を染める方法(ウールの草木染)
ウール(羊毛)の草木染めは、絹や木綿、麻とは染め方が少し違います。
草木染めはしたことがあるけれど、ウールは染めたことがない人向けに、その違いや染める方法を書きます。アルミ媒染です。鉄媒染など他の媒染はやったことがないので、書いていません。
※草木染の基本手順はこちら→ 草木染めで布を染める方法:綿・麻・絹
目次
ウールの草木染で染めるもの
家庭で簡単にできて、すぐ使えるものとしては、毛糸、マフラー、靴下、手袋などかと思います。
ニット(セーター)も、大きい器があれば染められるはずです(染めたことはありません)
本格的な人は、ウールの原毛を染めて、そこから手紡ぎで毛糸にして織物や編物をしたり、フェルトの作品を作ったりしています。
アクリルの毛糸など化学繊維は草木染では染まりません。ウールと化繊の混紡の場合は、霜降りに染まるそうです。
ウールの草木染が違う点、注意点
ウール染めは、シルクやコットンとはこんな点が違います。
- 高温にしないと染まりにくい
- フェルト化しないように気をつける必要がある
- だから、先媒染(媒染→染液)で1回で染める
- だから、急な温度変化をさせない(急冷厳禁)
- だから、静かにやさしく扱う(もまない、押さない、しぼらない、振動させない、動かしすぎない)
- 媒染液に酒石英を入れたほうがよい
- 染液のとり方は同じ。でも、染液が薄いとムラになりやすい
- アルカリに弱い(重曹などアルカリを入れて染液を煮出したら酸で中和してから染める)
- アルミ媒染はミョウバンでする
- はじめの湯通しに時間がかかる
毛糸の草木染めの流れ
毛糸の準備 → 染液を煮出す → アルミ媒染 → 染液で染色 → 湯洗い乾燥
毛糸を染める手順
染色手順を毛糸で説明します。
前準備1:カセを作る
毛糸が玉になっている場合は、カセにします。
何かにクルクル巻き付けます。椅子の背、段ボール、下敷きなどに巻き付けます。糸の始まりはわかるようにしておきます。
毛糸の始まりと終わりを輪になるように結びます。
芯にしたものから外して、輪の数か所(2~4か所くらい)を別の糸で輪っかもしくは八の字で留めます。
きつく留めると染まらないので、ゆるめに留めます。八の字というのは、毛糸の半分の量のところでクロスさせる留め方です。
両端を結んだ部分は、余った毛糸の端を使って留めると、ほどく時にわかりやすいです。(画力不足で絵で表現できず)
前準備2:お湯につけておく(重要)
まず、毛糸に水分を吸わせて、濡れた状態にします。
バケツなどの器にお湯(お風呂ぐらいの40℃程度~50℃くらい)を入れます。その上に毛糸を静かに置き、沈むのを待ちます。沈まない時は、手で押して、やさしく沈ませます。
油分が水分をはじいてお湯を通さない毛糸は、モノゲンなどウール用の中性洗剤を少し入れたお湯に10~15分程度つけます。その場合は、終わったら、バケツにお湯を溜めて、やさしくすすぎます。
水分をしっかり吸うまで、放置します。木綿や絹よりも時間がかかります。
染液を煮出す
染料を煮出します。
煮出したらこし布でこして、40℃くらいまで冷ましておきます。
薄い染液の場合、ムラになりやすいので、濃く染まる染料がおすすめです。木綿よりもぐっと色を吸うので、同じ感覚で染めようとしたら、染料不足になりました。
ウールはアルカリに弱いので、重曹などを入れて煮出した場合は、お酢などで中和させてから使います。
アルミ媒染液作り
ウール染めをする場合は、媒染剤の沈殿を防ぐために酒石英(酒石酸水素カリウム)を一緒に溶かします。染料店に売っています。みょうばんの半分~3分の1程度の量を使います。簡単に溶けます。
酒石英は、ワイン樽に結晶化するような物質で、食品添加物でもあるので、危険なものではないかと思います。
酒石英を熱湯(500ml程度)に溶かします。溶けたら、焼きみょうばんを追加して溶かします。
焼きみょうばんの量は、毛糸の重さの6%です。毛糸が100gなら、焼きみょうばん6グラム(大さじ2位)です。
液が透明になったら、ステンレス鍋に水もしくは40℃くらいのお湯を入れて、さらに薄めて、媒染液とします。
媒染液の水の量が、毛糸の30倍ぐらいになるように薄めます。毛糸が100gなら3リットルぐらい。染めるものの大きさによって加減します。ゆったりと浸かる量が理想。
媒染が薄すぎても色むらの可能性があるので、水量をさらに増やす場合は、調整したほうがいいかもしれません。
※加熱できる鍋が無い場合は、耐熱の容器に入れます。その場合は、熱湯から媒染を始めるので、熱湯にします。
アルミ先媒染
お湯につけていた毛糸が水分を十分に吸ったら、ザルで、もしくはトング等で毛糸をすくい、ザルに置いて水を切ります。しぼらない。ザルを斜めに置くと水が切りやすいです。
鍋を弱火~中火にかけて、40℃ぐらいまでになったら毛糸を静かにいれます。
毛糸が鍋底の直火につかないように鍋底にステンレスのアミとかお皿などを置くとよいです。内ザルが付いた鍋が理想。鍋底は温度が高く色がつきやすいため、色むらの原因になります。
ぐるっとかき混ぜて、ふんわり毛糸を泳がせます。動かしすぎないようにします。フタをして、ゆっくり温度を上げていきます。
時々温度を見て火加減を調整。上下を返す程度にトングなどでかき混ぜます。水面に浮く場合は、沈めるようにします。
80~85℃くらいになったら、火を止めて蓋をしたまま放冷します。時間が許せば一晩置いても大丈夫です。
※放冷の前に、30分~1時間くらい弱火にかけておく方法もあります。繊維が固くなりやすいかもしれません。
※加熱する鍋が無い場合は、熱湯から媒染をはじめます。蓋をして、徐々に放冷していきます。
お湯洗い
媒染が終わったら、ザルで、もしくはトング等で毛糸をすくい、ザルに置いて水を切ります。しぼらない。ザルを斜めに置くと水が切りやすいです。
バケツにお湯(お風呂ぐらいの温度)を溜めてから、やさしくすすぎます。冷水厳禁。
再度ザルに上げて水を切ります。
染液で染色
鍋の媒染液は捨てて、軽く洗ってから染液を入れます。水量が足りなければお湯を足します。
媒染と同様、鍋を弱火~中火にかけて、40℃ぐらいまでになったら毛糸を静かにいれます。
媒染と同様、ゆっくり温度を上げて、時々上下を返す程度に動かして、80~85℃くらいになったら、火を止めて蓋をしたまま放冷します。時間が許せば一晩置いても大丈夫です。
※放冷の前に、30分~1時間くらい弱火にかけておく方法もあります。繊維が固くなりやすいかもしれません。
※加熱する鍋が無い場合は、熱湯から染め始めます。蓋をして、徐々に放冷していきます。
お湯洗いして、洗濯機で軽く脱水
染色が終わったら、ザルで水を切り、湯洗いします。お湯をかえて3回すすぎます。お好みで柔軟剤を使います。冷水厳禁。タオルに包むか、洗濯ネットに入れて、洗濯機で軽く脱水します。
乾燥
カセのまま、日陰に干します。できれば平干しにします。よく乾燥させます。
ウール染めでの色ムラの原因
マフラーや靴下などのウールを染めて色ムラを経験しました。このあたりに気をつけたほうがいいのかも?という原因と対策を考えてみました。あっているかはわかりません。少しの色ムラなら、手染めの雰囲気(アジ)かと思います。
- 付着した油分が原因?精練されていない製品は、モノゲンなどウール用の中性洗剤にひたす前処理をする。ハンドクリームのついた手で触らない。
- 事前の吸水不足?お湯をきちんと吸水させる。モノゲンなどウール用の中性洗剤にひたしてから湯通しする。
- 媒染や染液で、急激に温度を上げすぎ?温度はゆっくり上げる。低温40℃位で長めになじませおいてもよさそう。
- 鍋底に近すぎる。鍋底は高温になりやすく、染まりやすい。それが色むらにつながる。
- 酢を入れて酸性だった。酸性寄りだと染まりやすいので、その分色むらになるのかも。
- 媒染、染液が薄すぎた。染まりやすい部分に先に入った後、媒染不足、染料不足になったのかも。
- 動かさな過ぎ。ウールが傷まないように気を使って動かしが少なすぎて、色むらになったのかも。
- 放冷するときも、熱いうちは時々動かすようにしたほうがいいかも。
- 水面からウールが出ていた。ウールは浮くので、水面から出やすい。放置する時は、重しをしてもいいのかも。
ウール染め実践例
実際にウールを染めた時の話は以下に書いています。
加熱せずに熱湯から放冷していく方法でも染まりました→ 草木染めでウールを浸し染め
その他ウールの豆知識
- 繊維の表面をスケール(うろこ状のもの)がおおっているので、表面は水をはじく疎水性。内部はとても強い親水性。
- ケラチンというたんぱく質でできてアミノ酸が多いのでよく染まり、色落ちしにくい。
- メリノウール、コリデールウール、ロムニーウールが染物によく使われる。
- 防縮加工されているものはフェルト化しない。(染色用でないものは加工方法によっては染まり具合に影響があるかも)
ワークショップに向けてウール染めの練習をしたので、染め方をまとめてみました。もっといい方法やコツがある方は、ぜひ教えてください。
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