媒染とは(鉄媒染、銅媒染の媒染剤)

媒染による染まる色の違い

草木染めの媒染剤について書きます。

アルミ媒染(みょうばんでの色止め)をすることが多いのですが、アルミの代わりに、鉄媒染や銅媒染など別の金属で媒染することで、染まる色が変わります。

媒染を変えると染まる色が変わるので、同じ染液で染めても複数の色あいが楽しめます。それも草木染の魅力の1つかなと思います。

媒染とは

英語ではmordantです。染料を繊維に定着させます。

草木染めの媒染には、発色させる効果と、色素を繊維に定着させる効果があります。

媒染による発色の違い

染料によって違いますが、傾向としては、アルミ媒染は明るい色、鉄媒染は暗い色になります。

銅媒染は青みのある色になる気がします(茶系や緑にも発色します)

アルミ媒染

アルミ媒染をすると、染液に近い、明るい色に発色します。地味好きな私には、少し明るすぎる感じがします。

漬物用の焼きみょうばんがスーパーで買えるので身近です。食品添加物でもあるので、キッチンで使うのに安心感があります。

アルミ媒染の詳細はこちらに書いています→ みょうばんアルミ媒染液の作り方

鉄媒染

天然のものは、泥媒染が有名です。泥に含まれる鉄分が媒染剤になります。

鉄媒染は暗い色に発色します。男性に似合いそうな、深い色あいです。暗くて濃い色に染まった方が、色落ちしにくい感じ(堅牢度が高い感じ)がします。

アルミ媒染をして、明るすぎると思った時に、鉄媒染で重ねて染めると落ち着いた色になるので、そういう調整に使うのがいいと思っています。

例えば、下の写真は、茜染めで、アルミ媒染と鉄媒染をテストしたものです。

茜染め色見本

上段:下処理無し木綿 下段:五倍子タンニン下地木綿
左:茜アルミ 中央:茜アルミ+茜薄め鉄 右:茜鉄

アルミ媒染で染めていてなんだか明るすぎると思ったら、最後に薄めに鉄媒染で染めれば、落ち着いた色になります。

あとは、五倍子やヤシャブシなど、アルミ媒染では薄い色で、鉄媒染では濃い色になる染料もあります。そういう時には鉄媒染を使います。

下の写真は、ヤシャブシ染めのアルミ媒染(黄色)と鉄媒染(グレー)です。

ヤシャブシ染めコットン

木酢酸鉄液

鉄媒染をする時は、主に染料店で買った木酢酸鉄液を使っています。写真は、誠和(高田馬場にある染料店)の木酢酸鉄液です。

木酢酸鉄液

上澄みを使うので、振らないように気を付けてますが、沈殿物らしきものも入るので、本当はこしたほうがいいのかもしれません。「上澄みを使う」という使い方も、どこまでが上澄みなのか迷います。

使用量は製品によって違います。これの場合の目安は、生地の重さの濃色4% 中色2% 淡色0.5%です。

鉄媒染する際は、入れる分量に迷います。入れすぎてシルクが真っ黒になったことがあり、少しずつ入れて、様子を見ながら使っています。

量を減らした場合に、色止めの効果がどう変わるのかはわかりません。適当に使って、発色すれば効いたと判断しています。

古くなると効きが悪くなり、さらに使用量に迷います。古い木酢酸鉄は使わないほうがよいです。最後まで使い切ろうとしてはいけないものらしいです。どうせ買うのであれば、安定性のよい「鉄媒染液」を使う方がいいのかもしれません。このあたりは、悩んでいます。

媒染の温度は、常温でしています。冬の水が冷たい時期は、お湯を混ぜて20℃くらいにしています。

硫酸第一鉄

ほんの少しの量をお湯に溶かして、すぐに水に薄めて使っています。

硫酸第一鉄

溶かすのがめんどくさいのであまり使ってませんが、きちんと染めたい時には使うようにしています。

あと、見た目が緑色の粉末で、薬品という感じがして、そういう意味で使いにくいです。

鉄媒染のコツ

わたしが鉄媒染をする時に気を付けていることです。

  • 鉄媒染が濃すぎると真っ黒になる(どの植物でも同じ色のようになってしまう。特にシルク)
  • 木酢酸鉄の場合、古くなると酸化して効きが悪くなるし、適量がむずかしい。今まで様子をみながら使用量を調整して使っていたが、古いものは最後まで使い切ろうとはせずに、廃棄するべき。
  • 鉄媒染は酸化しやすいので使う直前に薄める
  • 商品によって濃度が違うので、ラベルの使用方法を参考にする

鉄くぎからの作り方メモ

手作りする場合は、鉄くぎから作ることもできるそうです。私は自分で作ったことはありません。「おはぐろ鉄」と呼ばれるものです。

さびた鉄クギ:水:お酢=1:1:1を半分の量になるぐらい煮詰める→数日置く→こしてビンに保管

色むらになりやすい

暗い色に染まるからか、色むらになりやすく、ムラが目立ちやすいです。アルミ媒染と染め分けする時など、水滴が飛ぶとそこだけ黒い点になったりもします。

どうも私は、指跡をつけてしまうクセがあるようです。手袋に鉄媒染が付着していないか考えながら作業すべきと思っているものの、気付かずに付けてしまっています。

鉄媒染での色むら

銅媒染

天然のものは、宝石の孔雀石(マラカイト)を酢に溶かして作るそうです。なんだか素敵。

私は、染料店(誠和)で買った銅媒染液を使っています。

銅媒染液

安全性はよくわかりません。廃液中の銅イオンがよくないと考える人もいるらしいです。

普通に販売されている媒染液は濃度も低いし、それをさらに水に薄めて使うし、金属イオンは布に入ると考えると、自宅で使う分量なら問題はないかと思っていますが、気軽には使いにくいです。

アルミ媒染でペーハーを変えることで色合いを調整できるものなら、銅媒染は使わずに、アルミ媒染で済ませたいです。

染料にもよりますが、銅媒染だと青みが強くなることもあって、好きな色(パーソナルカラーでいうサマーの色)に近くなると感じています。

その他の金属の媒染液

錫媒染液とチタン媒染液を当初購入しましたが、あまり使っていません。

染料店には、アルミ、チタン、銅、スズなど金属媒染用の液が売られています。規定量を目安にして入れるので簡単です。

媒染の原理

原理はいまいちよくわかってませんが、調べたことを書きます。

  • 染色は、染料の分子と繊維の分子がくっつくことで染まる。くっつく=イオン結合、水素結合、分子間力、配位結合。
  • 先媒染では、色素分子が付く部分を増やして、染まる色素の量を増やす。また、色素分子が付きやすい部分に入りやすくする。
  • 後媒染では、色素分子と結合したりして、色素の吸着を補強する。
  • 配位数が6の金属イオン(鉄、アルミニウム、クロム、コバルト、スズ、マグネシウムなどのイオン)の場合は、八面体の形で、金属イオンを中心にして、色素や繊維が複雑に配位結合する。
  • 色調の変化が重なると、色がくすむ。鉄媒染の濃度が濃いと、色調の変化の重なりが多くなって、黒く見える。
  • 石灰水などでのアルカリ媒染は、色素分子を水に溶けない状態にして繊維に固着させる。

媒染剤の安全性で思うこと

天然だから安全、薬品だから危険、ということはないと思います。

商品として売られているものは、用途に沿って考えられて作られているので、使用方法を守れば、一般的にいう安全だと思います。

トコトンこだわる派の人なら、無媒染で染める染料(キハダ、クチナシなど)もあるので、そういうもので染めるのがいい気がします。

そうではない染料でも、媒染剤を使わずに、何度も重ねて染める自然派の人もいるかと思います。

何媒染になるのかわかりませんが、温泉の湯の花を使った媒染というのもあって、面白そうだなと思います。

同じ鉄を指す言葉でも、「鉱物」「ミネラル」というと体によさそうで、「重金属」というと体に悪そうなイメージ。

※2022年10月追記:湯の花が何媒染になるのか?について下記の情報をお寄せいただきました。

北海道ではアイヌの人達が草木染めを行っていたのですが、ハンノキ、オンコ、ハマナスで染めたものは、ミョウバン温泉につけていたと、アイヌの方への聞き取り調査の記録が残っています。ミョウバンはAlK(SO4)2ですから、アルミニウム媒染になると思われます。
ちなみにクルミの実で染めたものは、鉄分を含む沼や泥の中へつけて黒くしていたそうです。

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