濃染剤カラーアップZBとディスポンについて
草木染めで木綿や麻を染める時、植物繊維にはうまく染料が入らないため、濃染処理をすることがあります。私は主にコットンを染めているので、何もしないと染まらない染料の場合は、染料屋さんで買った草木染め用の濃染剤を使っています。
草木染めを濃く染めるのに便利です。成分はカチオン化剤という界面活性剤の一種です。
藍熊染料の「濃染剤カラーアップZB」と誠和の「ディスポン」、簡易的な豆汁処理での違いをテストしました。
ちなみに、濃染剤を使うと、濃くなるだけでなく、色自体が変わる場合もあるのでご注意ください。
染めた日:2019年3月27日,2019年4月1日,2019年4月10日
目次
濃染剤の使い方
染める前、生地に糊などがついている場合は、洗い落としてから使います。
ディスポンの使い方
80~90度のお湯にディスポンを入れて、まぜて、布を20~30分くらいひたします。鍋で加熱しながらでも大丈夫です。時々、布を動かします。終わったら、しっかり水洗いします。
使う量は、水1リットルにディスポン3~4mlです。価格は、250gが税別750円くらいです。高田馬場の誠和で売っています。
濃染剤カラーアップZBの使い方
50~60度以上のお湯に濃染剤カラーアップZBを入れて、まぜて、布を20~30分くらいひたします。時々、布を動かします。終わったら、しっかり水洗いします。
使う量は、水1リットルに濃染剤カラーアップZBを5~10mlです。値段は、500gが税別1500円くらいです。浅草の藍熊染料で売っています。
濃染剤処理あり・なしの色の違い
テスト1:一緒に染めた場合
一緒に染めた場合、こんなに違います。白いものが処理をしなかったものです。「濃染剤カラーアップZB」と「ディスポン」はほぼ同じ色でした。生地はコットンガーゼ、よもぎ染めです。
濡れている状態だともっと明確にわかります。
一緒に染めると、染まりやすいほうに色素がとられるので、余計に白くなってしまいます。
テスト2:別々に染めた場合
下記は、染液を分けて染めた時のもの。使った染液は違います。生地はコットンガーゼ、よもぎ染めです。
左から、ディスポンの鉄媒染、ディスポンのアルミ媒染、濃染処理なし、短時間(5分)の豆汁処理のアルミ媒染です。豆汁が緑っぽくなっているのは、染液の違いです。「色の濃さ」だけ見てください。
濃染処理しない場合、本当にうすい黄緑です。写真では色が飛んでいます。染めていても、色が入っていく感じがせず、つまらない感じです。
短時間の豆汁処理は、ディスポンした場合と濃染処理なしの間ぐらいの濃さでした。無処理に比べれば色は入っていく感じはしたものの、処理する際に少し魚臭いニオイがしました。
濃染剤の成分
濃染剤が「何でできているのか」がずっと疑問でした。今も正しい成分名は知りません。ディスポンの裏には、「成分:特殊カチオン性高分子」と書かれています。
わかっていることは、カチオン化剤であるということです。
植物繊維のセルロースはマイナスに帯電しているので、そのマイナス帯電をプラス帯電にするという作用があります。繊維の表面をプラス(陽イオン)に持っていって、シルクなどの動物繊維に近い状態にすることで、染まりやすくします。
危険な薬品ではありません。それを無害と言い切れるのかは、個人のモノサシ次第かと思います。
例えば、食器を洗う台所洗剤が無害ではないと思うような敏感な人にとっては、無害ではないと思います。でも、普通にシャンプーやリンス、柔軟剤を使って生きている一般の人から見たら、無害だと思います。
わたしのモノサシだと、香りが残る柔軟剤に比べたら安全です。
濃染剤をテストした理由
よもぎ染めのワークショップをするためにテストしました。
初めて使った濃染剤がディスポンだったので、今までずっとディスポンを使っていました。愛読している「草木染め大全」の著者、箕輪直子さんのオンラインショップでも販売されているし、わたしにとっては身近な存在です。
ただ、ディスポンの場合、使う際のお湯の温度が80~90度と高く、熱湯を作る必要があります。
それが、使ったことのない「濃染剤カラーアップZB」の場合は、50~60℃であることに気がつきました。
ワークショップで借りる部屋の給湯器から出る最高温度が60℃なので、「濃染剤カラーアップZB」なら、わざわざお湯を沸かすことなく濃染処理ができます。ちなみに自宅の給湯器の最高温度も60度なので、自宅で使うにも手軽そうです。
そこで、使ったことがない「濃染剤カラーアップZB」を使ってみて、ディスポンとの色の違いを確認することにしました。同じ結果だったので、ワークショップで使いました。
逆に、ディスポンの場合は、温度を80度以上にするので、油脂分を取り除くための簡易的な精練代わりにもなる、という利点があります。
濃染剤以外で木綿の草木染めを濃く染める方法
濃染剤を使わずに、濃く染める方法としては、下記のようなものがあります。
- タンニンを含む染料で下地染めする方法
- 豆汁や豆乳に浸して乾かす方法
- 漂白されてない素材で時間をかけて染める方法
- 柔軟剤(やったことはありません)
タンニン下地
ミロバラン、ヤマモモ(渋木)、ザクロ、五倍子、カキの果実、没食子(もっしょくし。ブナなどの若芽の虫こぶ)、ミモザの樹皮、緑茶や紅茶などはタンニン酸を含んでいるため、濃染しなくてもコットンが染まります。
先にその染料で薄く下地染めすることで、植物繊維が濃く染まるようになります。多少なりとも色はつくので、組み合わせや濃度など、注意が必要です。
身近なものとしては、お茶の出がらしを使って下地にする方法があります。やったことはありませんが、色がくすむそうです。(あと、高温で淹れたお茶の出がらしだと、タンニンが残り少ない可能性もありそうです)
手軽なものとしては、染料店に、精製された「タンニン酸」が売っています。
あと、染める植物と似たような発色の下地用の染料を選んだ場合、「ミロバランで下地染めをするんだったら、ミロバラン染めをすればいいんじゃないの?」というような気持ちになってしまう点が難しいです。
※タンニン下地をテストした話はこちら→ タンニン下地(五倍子使用)
豆汁下地
豆汁下地は、まず豆を水にいれて一晩置き、水を入れてミキサーし、こして液だけにして、そこに布をつけます。そして乾かします。寝かせたり、何度か繰り返します。
豆乳でも代用できます。
通常手順では一度乾燥しますが、簡易的に豆汁に布をつけるだけでも、多少は色づきがよくなります。
ムラになりやすいのと、においの問題もありそうなのでハードルが高いです。経験不足なので練習をしてから、自然な物だけでやりたい時に活用できればと思います。
※豆汁下地をテストした話はこちら→ 豆汁下地のやり方、色ムラと色あい
漂白されてない生地を使う
漂白されたサラシは色が入りにくく、逆に、少し黄色をしている生成は染まりやすいです。
精練や漂白をしてない生地を使い、長い時間をかけて染液→媒染液を繰り返して染めていくと色が入ります。
植物繊維の場合も、生地に少しだけタンパク質があって、それをもとにして染まることができるとか。漂白するとそれが落ちてしまい、染まりにくくなるそうです。
薄ピンクの桜色を染めたい時は、地の色が黄色だとクリアな色にならないので使えない技ですが、濃色やくすんだ色あいにしたい時は、生成の生地を使うとよさそうです。
柔軟剤
実際にやったことはないのですが、柔軟剤にもカチオン化剤が含まれているので、濃染剤の代わりに市販の柔軟剤を使うという手もありそうです。
私は柔軟剤とか香料が苦手で、精練の際に少量のモノゲンを使うことも実は少し気になっているくらいなので、柔軟剤は使いません。
濃染しない場合
ミロバラン、ヤマモモ(渋木)、ザクロ、五倍子、カキの果実、没食子、ミモザの樹皮、緑茶や紅茶などはタンニン酸を含んでいるため、濃染しなくて大丈夫です。
通常濃染しそうな植物でも、時間をかけて染めれば、濃染処理しなくても、木綿や麻が染まるものもあります。退色が早いかもしれませんが、その時々の色を楽しむという考え方もあるかと思います。
あと、染液は濃いほうが染まりやすいです(濃く煮出すと逆に染まらなくなる植物もたまにあるので注意)薄い場合は、一晩漬けて置いたら、色が入っていたことがあります。濃くするために、時間をかけて染めます。
あとは、一度乾かしてから再度染めること。
濃染剤で色が変わった経験
桜は濃染剤を使わないほうがキレイです。シルクよりも染まるまでに時間がかかります。この話はこちら→桜染めの色テスト
ブルーベリー染めでも、濃染剤(カチオン化剤)はいまいちでした。
※ブルーベリー染めで違いをテストした話はこちら→ ブルーベリー染め濃染テスト
濃染剤について思うこと
- コットンやリネンを染めるのには手軽でよいと思う。使わないことで染める植物の幅がせまくなるくらいなら、使いたい
- 草木染めの重視点はひとそれぞれ。私は色優先なので、色あいが変わる点に気をつけたい
- 薬品について考え始めると、染める前の生地自体に生産過程で処理された薬品(キャリーオーバー)も気になってくる
- 剤自体は繊維に残るものなのか?がわからないので知りたい
- ワークショップの場合、できれば使いたくないと思っているが、結構使っている
濃染剤テスト1の手順
テストした布:10×10cmのオーガニックコットンガーゼ
濃染処理方法:
- 80℃以上のお湯500mlにディスポン2mlを入れて20分、終了後水洗い
- 50~60℃のお湯500mlに「濃染剤カラーアップZB」5mlを入れて20分、終了後水洗い
- 50~60℃のお湯500mlに「濃染剤カラーアップZB」2mlを入れて20分、その後水洗い
※「濃染剤カラーアップZB」は、基準量が1リットルに5~10mlなので、少なめと多めをテストしました。
染色方法:
- 濃染処理の後、残っていたヨモギ染液を高温にして20分ひたす
- 水洗い
- みょうばん媒染(常温・焼ミョウバン6g/水2.5リットル)に1時間15分ひたす
※用事があって放置したため - 水洗い
- 再度、ヨモギ染液に20分ひたす
- 水洗いして乾かす
濃染剤テスト2の手順
テストした布:50cm×50cm 約35gのオーガニックコットンガーゼ
濃染処理方法:
- ディスポン処理:80℃以上のお湯2Lに小さじ1(5ml)のディスポンを入れて20分、終了後水洗い
- 豆汁処理:水に浸透させた大豆24gを、水160ccでミキサーにかける。液をこす。布を湯通しする。しぼった豆汁に布を5分つけてしみこませる。洗わずにしぼる。そのまま染液へ。
おおよその染色方法(ものにより、時間や使った染液の状態が違います):
-
- 高温にしたヨモギ染液に20分ひたす
- 水洗い
- 媒染20分
- 水洗い
- 再度、ヨモギ染液に20分ひたす
- 水洗いして乾かす