剪定枝の処分と有効活用
植物の剪定をした際、剪定枝、切り枝の処分はどうしていますか?
庭木の伐採をした人は、切った枝はゴミだと思っていると思いますが、草木染めをする人から見たら、お宝です。剪定ゴミとして処分する前に、染物(草木染め)の原料として有効活用できることをお伝えしたいと思います。
草木染めを全然しない人は、お花で染めると思っていたりしますが、お花で染める植物は少なく、枝や葉、樹皮、芯材で染める植物が多いです。果実や果皮、根っこが使われるものも一部あります。庭木や街路樹として使われる植物の多くは、草木染めの材料として使えます。
地味な茶色やベージュにしか染まらないと思っている人も多いですが、意外な植物からピンクや赤、黄色がとれたりもします。
メルカリで剪定枝や葉を染料として売っている人もいます。
染物に活用できそうな剪定枝についてご紹介します。
目次
剪定枝が活用できる植物
草木染はやろうと思えばほとんどの剪定枝が材料になります。ここでは、身近で剪定されやすい植物、染まる色がかわいい樹木についてご紹介します。
ビワの剪定
枇杷は、葉、樹皮、芯材が染物に使えます。葉っぱが一番手軽で、乾燥して保管しても使えるので便利です。
枇杷は枝や葉っぱでは、シルクがピンクオレンジ色、木綿がピンクに染まります。枇杷の実よりは赤みがある色です。
なお、ビワの葉は染料店で染料としても売っています。
※枇杷の枝での染色方法はこちら→ ビワの枝でオレンジピンクを染める
ソヨゴの剪定
ソヨゴの葉で、赤系のきれいな色に染まります。とても興味深い染料です。都内でも目にしたことがある植物なのですが、近所ではみかけません。
遠方の方から葉っぱ送ってもらい、生地を染めました。麻生地はオレンジピンクに染まりました。
シャリンバイの剪定
大島紬の泥染めで黒に使われるのはシャリンバイ(テーチ木)です。テレビの特集で泥染めを見た時、泥に入れる前の染色が鮮やかな赤だったのが印象的でした。そこから鉄媒染で黒に発色させるので、アルミ媒染だったら赤色にも染まるのだと思います。
シャリンバイは、よく低めの街路樹として見かけます。丸っこい形の若干厚みのある葉っぱで、冬は黒っぽい実がついています。花は白で、ピンクもあります。
いつか剪定枝を手に入れて染めてみたいものの1つです。
桜やサクランボの剪定
桜はあまり剪定をしない木といいますが、ヒコバエと言って根元から生えてくる若い枝をお花見の前に危ないから伐採することがあるそうです。また、強風が吹いて折れかけた枝は、落下の危険を避けるために切ることはありそうです。
桜やサクランボは、小枝からピンクや赤茶が染まります。花では通常は染まりません。(特殊なやり方はあるらしいです)
桜で桜色を染めるのは結構むずかしいのですが、ロマンがあって人気です。手に入らなくて欲しい人にとっては桜の小枝が本当に欲しいものなので、捨てるのはもったいないと思います。売買したことはありませんが、売る価値があると思います。
2~3月頃の、花が咲く直前のつぼみがついた新鮮な小枝が人気です。
私が染めたことがあるのは、ソメイヨシノ、八重桜のサトザクラ、サクランボの佐藤錦、ナポレオンですが、どれも調整すればきれいな桜色が取れました。八重桜と佐藤錦が特に出しやすかったです。
※桜、サクランボ染めの方法はこちら→ さくらんぼの剪定枝で草木染め
梅の剪定
花瓶に飾ってあった、お花の終わった梅の枝からも、ピンク色が染まります。
着物の白い裏地を梅染めしたものです。キレイな色に染まります。
※染め方はこちら→ 着物リメイクに。裏地を草木染め(梅染め)
杏の剪定
杏の剪定枝からアプリコットオレンジが染まりました。
※染め方はこちら→ 杏の剪定枝で草木染め
柿の剪定
柿というと、柿渋(青い実を発酵させて茶色を染めるやつ)が有名ですが、柿の木から取った枝や葉っぱでも黄色やピンクが染まります。
染めるまでは、茶色っぽいのかなと勝手に思っていたのですが、ピンクや黄色が鮮やかでした。
※庭の柿の木をもらってワークショップをした話はこちら→ 柿染めワークショップ開催報告
※柿の枝や葉で染める方法はこちら→ 柿の枝、柿の葉で染めた色
ブルーベリーの剪定
ベランダで小さいブルーベリーの木を育てています。
ブルーベリーの剪定枝から、紫っぽさのある色が染まりました。
※剪定枝で染めた話はこちら→ ブルーベリーの剪定枝で紫っぽく染める
ブルーベリーの紅葉から、オレンジピンクに染まりました。
※赤い葉っぱから染めた話はこちら→ 紅葉した葉で染める不思議
ブルーベリーの実からは紫色を染めたことがあります。実で染める場合、染まりは濃いですが、比較的色落ちしやすいです。
※詳細はこちら→ ブルーベリーの実で染まる色と色変化テスト
ヤマモモの剪定
ヤマモモは、樹皮部分が黄色の天然染料として染料店で売っています。ヤマモモの街路樹を見かけたので、剪定枝を手に入れたら、枝葉で染めてみたいと思いました。
赤い実でもピンク系に染まりますが、アントシアニンなので退色がはやいです。
ツツジの剪定
ツツジの枝葉で黄色に染まります。ウールの黄色がきれいです。垣根の剪定時期にもらえそうな樹木です。
松の剪定、杉の剪定
松や杉の葉っぱで、赤茶系の赤みの強い色が染まります。こんなに緑色のものから、赤色が染まるなんて不思議です。
剪定枝に限らず、お正月のしめ縄や門松飾りを捨てる際に活用出来たら素敵と思ったのですが、鮮度の問題か、時期的なものなのか、失敗しました。詳細はこちら→ 草木染めの失敗記録
モッコクの剪定
モッコク(木斛)は枝葉で赤茶系に染まります。
わたしには木の判別ができないのですが、公園でみかけました。こんな樹木から赤系の色が染まるのが不思議です。
左側がシルクを薄めに染めたもの。もっと濃い赤茶にも染まります。
ベニカナメモチの剪定
紅カナメモチはマンションなど集合住宅の生垣、垣根としてよく見かけます。伸びた若芽だけ赤色になっているので、その部分が気になります。
枝で染めるとピンク、桜色でした。詳細はこちら→ ベニカナメモチの枝で布を染める
赤い葉で染めたところ、また違うピンク色に染まりました。赤い葉はアントシアニンなので上手く染めるのはむずかしく、失敗しました。詳細はこちら→ ベニカナメモチの赤葉で染める
その他の剪定枝で草木染めできる植物
書ききれなかったので、とりあえず思いついた樹木をリストにします。
- サンゴジュの剪定(枝葉) 赤茶系
- トチノキの剪定(緑の葉) 赤茶系 栃の実も赤茶系
- オリーブの剪定(枝葉) 黄色系
- サルスベリの剪定(枝)黄緑系
南天の剪定枝について
南天は太い枝の中をむくと、黄色になっています。
その部分や、緑色の葉で重曹などを入れて煮て、黄色に染まります。書籍にも載っている染料なので大丈夫だとは思いますが、多少の毒を含むため、自分で少量を染めるのにとどめています。
剪定以外の廃棄植物の染物活用
剪定枝以外でも、刈草や収穫物の残りも染色の材料として活用できます。
ウメノキゴケ
ウメノキゴケはアンモニア発酵させて紫色が染まります。アンモニアが臭いので屋外での染物になります。最近ウメノキゴケについて聞かれることが増えたので、流行っているのかも。
※ウメノキゴケの染め方はこちら→ ウメノキゴケのアンモニア発酵で紫色を染める
私も半分は失敗したし、紫にならなかったという話も聞くので、難しい染物かとは思います。
臭木(クサギ)の実
クサギの実で水色が染まります。季節は秋です。実を煮た液にシルクを浸す、それだけで水色に染めます。
※クサギ染めの話はこちら→ クサギの実の採取とクサギ染めテスト
ヌルデの虫こぶ
ヌルデの虫こぶは、五倍子(ごばいし、ふし)といって、伝統的に草木染めに使われています。夏~秋に採取。
紫っぽい灰色に染まります。
その他
- ニンジンの葉 黄色
- ザクロの果実の皮 黄色(ザクロは乾燥染料としても売られている強い色です)
- そら豆の薄皮 ピンク
剪定枝と草木染めの材料
草木染めで染めてみたい植物は多いのですが、都会のマンション暮らしで、どうやって材料を入手するか悩んでいました。
なので、材料が手に入りやすい田舎に移住したいと思っていましたが、近所を植物観察散歩していたら、都会にも、植物ってそこかしこに沢山あることに気が付きました。
私のベランダには植木鉢が少ししかないけれど、外に出れば、庭木として育てているお家もたくさんあって、街路樹があって、公園にも樹木があります。それを剪定するタイミングがあえば、手に入るかもしれないことに気が付きました。
天気の良い日にウロウロ住宅街を徘徊すれば、植木屋さんが剪定、伐採している場面にも巡り合います。
禁止されている場所でなければ、地面に落ちている枝や実を取るぐらいはできます。
でも、茂っている葉っぱや枝を勝手に伐採すると問題になりそうなので、剪定のタイミングをみはかって、剪定枝をお願いしてわけてもらうのが一番よさそうです。
欲しい人がいて、それを捨てる人がいるなら、リサイクルショップやヤフオク、メルカリみたいにつなげられたらいいのに、と思いました。
草木染め人口自体はかなり少ないのですが、染める場所さえあれば、興味を持つ人、特に女性は結構いそうです。地元の植物で染める体験ワークショップや町おこしイベントを時々見かけますが、素敵な活動だと感じます。
メルカリでの販売
メルカリで売れると思います。
例えば桜の小枝からはピンクが染まるのですが、桜染めしてみたいと思っても、桜の枝は手に入りにくいです。新鮮な枝なら売る価値はあると思います。
10~11月頃、クサギの実の販売も見かけて、結構高値です。
たい肥化用の剪定枝集積場
剪定枝を手に入れる場所を調べていたら、たい肥にするための剪定枝を集めている場所、集積場を発見しました。
問い合わせをして、少しならもらっても大丈夫なことを確認できたので、よさそうな枝葉を持ち帰ったりしています。桜の枝も見かけました。
ただ、いろんな植物が混在して積み上がっているので、自分で何の植物か判別しなくてはならず、そこに知識不足を感じます。植物の枝葉を見ただけではなかなか判断できません。
調べてみると、剪定枝のたい肥化、チップ化を試みている自治体は結構あります。庭木の剪定をされる方は私よりも詳しいと思いますが、剪定枝をたい肥の材料にするという手もあるんですね。
サステナブル社会なのだなあと思います。
リサイクルやリユースという面では、剪定枝で草木染めをする場合も、新品の布ではなくて、自宅に眠っている古びた布を染め直ししてリユースできたら素敵だと思います。
剪定枝の募集(草木染めワークショップ用)
岡山市内で(東京から岡山市に引っ越したので)植物を剪定する予定があって、草木染めワークショップで使う材料として提供してもよいという方がいましたら、お気軽にお問い合わせフォームもしくはインスタグラムからお知らせください。
タイミングがあって使えそうでしたら、とりにうかがいます。
不明点やアドバイスがありましたら、お問い合わせフォームもしくはインスタグラムから、お気軽にお知らせください。
※剪定枝はあるけれど草木染めのやり方がわからない方はこちら→ 草木染めで布を染める方法:綿・麻・絹
※草木染めを体験してみたい方はこちら(岡山市内です)→ 草木染め体験ワークショップ