草木染めの色落ちや色変わり
自分で草木染めした服や布小物を使って、どの程度退色、変色したのかを書きたいと思います。
最近、草木染の堅牢度(日光、洗濯、汗、摩擦などによる変色、退色しにくさ)について考えさせられることが多いので、自分の考えを整理するためにも、自分で染めて使ったものが、使用後にどう変化したか書きたいと思います。
ヌメ革の経年変化のように味が出れば素敵なのですが、そういう感じではありません。どちらかというと、くたびれたTシャツが心地よいね、という感覚に近いです。
色が落ちたら染め直しします。その時々で違う色が楽しめます。商売にするなら、そういう「楽しさ」を売りたいです。
目次
草木染めの堅牢度
草木染に使うのは、天然染料(植物染料、動物染料)です。市販品を染める化学染料とは違い、堅牢度が低いです。
ほとんどの草木染めは日光に弱いので、日差しを浴びると退色・変色します。洗濯でも色落ちします。汗にも、食べこぼしにも弱いです。
私は重ね染めをして堅牢度を高めて濃い色にしたものよりも、淡い色でも、その旬なその時々の色を楽しむ感じが好きです。色落ちや色変わりがしやすくても、いいなと思える色にしたいです。できた時の色を長く使うことよりも、変化したその時々の色を楽しむものがいいです。
染料店には、色止剤という薬品も売っています。植物染色した後にそれを使えば、色落ちしにくくなるそうです。でも、それを使う気にはなれません。(草木染めでそういう色止剤を使っている人はあまりいないと思います。)
市販の草木染め製品は、変色しにくい植物染料を使ったり、期間をおいて枯らしたり、何度も染めたり、洗ったり蒸したり、生地の原料から染めるなどの工夫がなされていて、わたしが自分で染めているものとは違うはずです。(他の方の草木染めまで同じように退色・変色すると思われたら困るので、念のため)
自分の染め方、お手入れ方法
自分の染め方
私の染め方は、普通の染液で何度か染液と媒染を往復して、色が気に入ればその日1日だけで染色終了です。
薄い色を染める場合も、濃い染液で一度に染めるよりも、薄い染液で何度も染め重ねたほうが色落ち色変わりしにくくなるそうですが、それはやっていません。
洗濯方法と洗濯洗剤
お手入れも、「ぬるま湯で洗う。汚れたら、おしゃれ洗い用(エマールなど)や中性洗剤(ヤシノミ洗剤など)を薄めて使う」のがよさそうですが、自分ではやっていません。
※2024年1月追記:2022年頃?にエマールの成分変更があり酵素入りになったので、エマールはおすすめではありません。
わたしの場合、汗がついても洗わずに放置するし、ブラウスやシャツは他の洗濯物と一緒に洗濯機で洗っています。
洗濯洗剤は、2019年8月上旬までは「トップクリアリキッド」(弱アルカリ性)です。2019年8月中旬以降は「海へ・・・」(中性)を使っています。2019年11月からは「浄JOE」(弱アルカリ性)も併用しています。
なので、そういう染め方、お手入れをした場合にどの程度変化するのか、というサンプルとして見てください。きちんと配慮した場合は、ここまで色落ちしないと思います。
草木染めの経年変化
巨峰染めウールマフラーの退色
2019年1月に巨峰の皮で染めたウールのマフラー。冬に普段使いしていました。洗濯はしていません。ウールがしっかり染まる素材だからか、冬が終わっても変化していませんでした。
アントシアニン系色素はすごく退色しやすいはずで、地の色がキナリだったので黄色っぽくなるかと予想していましたが、まだ大丈夫です。あいまいな色が気に入っています。
1年後に少し色が薄くなり、ぶどう色っぽさが無くなりました。赤みも青みも黄みもすくない色。ピンクベージュっぽい、原毛ウールの色としてもありそうな色です。変な色ではありません。
染めたときの色(染めた日:2019年1月28日)
使用後の色(撮影日:2019年5月11日)
クローゼット保管1年後(撮影日:2020年1月12日)
エンジュ染めコットンストールの色落ち
2017年9月に体験で染めたエンジュ染めのオーガニックコットンストール。黄色は苦手な色ですが、肌触りが気持ちよかったので、マフラー代わりに通勤に使いました。首元に汗をかくため、その部分の色が抜けました。首に巻くと隠れるので気にせず使っていました。
アイロンをかけたら少し濃い色になりましたが、全体的な色はあまり変わっていません。その後重ね染めして深緑色、さらに重ねて黒に近い色にしました。
染めたときの写真(撮影日:2017年9月16日)
※このストールを初めて染めた話はこちら→ MAITOの草木染めワークショップ体験
使用後に首もとの色が抜けたところ(撮影日:2017年11月7日)
使用後1年ちょっと。色が抜けているところ(撮影日:2019年1月9日)
重ね染めして失敗し、鉄媒染で黄土色になったところ。(撮影日:2019年1月9日)
その後、ログウッドを重ね染めしてダークグリーンになったところ。(撮影日:2019年7月31日)
※重ね染めの話はこちら→ 草木染めストールの染め直し
さらにスダジイを重ね染めして、黒に近い色になったろころ。(染めた日:2019年12月)
※黒っぽくした話はこちら→ スダジイ染め(重ね染めストール)
スオウ染めコットンストールの変色
2019年2月に体験で染めた、蘇芳染め銅媒染のコットンストール。冬~春と使って、汗のつく首元が色抜けして、オレンジになった部分があります。一度手洗いで洗濯して、全体的な色は少し薄くなりました。蘇芳は堅牢度が低い染料です。
当初濃すぎると思っていたのでちょうどよい感じです。気に入っています。秋になったらまた使います。
蘇芳で染めたときの写真(撮影日:2019年2月11日)
使用後の写真(撮影日:2019年5月11日)
首もとの退色部分(撮影日:2019年5月11日)
※染めたときの話はこちら→ 浅草の藍染屋さんで蘇芳染め体験
染め直し。ストールは気軽に染め直ししやすいです。(撮影日:2020年11月)
コチニール染めコットンガーゼブラウスの退色
2017年10月にコチニール(サボテンに付くカイガラ虫)でコットンガーゼの布を染めました。ディスポンで濃染処理しています。その後フレンチスリーブのシャツに縫って、銅媒染に染め直しました。
真夏に通勤で着ていました。汗をかくので洗濯機で日々洗っていて、どんどん色が薄くなり、その薄くなった色が好きでした。何度か染め直しして着ています。
当初のアルミ媒染のピンク(撮影日:2017年10月28日)
銅媒染に染め直し。紫がかったピンク(撮影日:2017年11月4日)
フレンチスリーブシャツに縫製完了(撮影日:2018年5月4日)
開きを追加したので銅媒染で重ね染め。チャコペン部分?が青くなる。(撮影日:2018年5月14日)
洗濯機でどんどん洗って、色が薄くなった状態。このぐらいが一番好きな色です。(撮影日:2018年7月7日)
さらに色が抜けて、染めなおそうと思った状態。(撮影日:2018年8月4日)
銅媒染で染め直して、想定より派手な紫色になる。(撮影日:2018年8月4日)
他の染物ついでに、鉄媒染で染め直したがあまり色がつかず(写真なし)
その後。縫製時の色に近い。生地はくたびれています。(撮影日:2019年5月11日)
その後、ログウッドで重ね染め(撮影日:2019年7月7日)
※染めたときの話はこちら→ ガーゼ綿生地をコチニール染め
※銅媒染に変更した話はこちら→ 綿生地コチニール銅媒染に染め直し
※生地が傷み過ぎて、2020年夏は着ませんでした。もう着用はしません。ガーゼ生地だし、十分着用したと思います。
コチニール染めタックブラウスの汗じみ
2018年8月に縫製したタックブラウスを黒豆染めしてあまり色がつかず、コチニール鉄媒染で染めたもの。ディスポンで濃染処理した綿ローン生地です。真夏に自転車通勤して、脇汗部分だけが色変わりしました。これはちょっと恥ずかしいので、染め直して補正しました。
染めたときの写真(撮影日:2018年8月13日)
脇汗部分を放置してしまい、袖下が青っぽく変色したところ。(撮影日:2018年8月24日)
重曹入りコチニール鉄媒染で染め直した後。シミは消えていないが、目立たなくはなった。全体は濃く落ち着いた色になるが、糸は濃染していなかったので白い。(撮影日:2018年9月10日)
コチニール染め春コートは光で退色
コチニールで麻生地(リネン)をアルミ媒染で染めました。鮮やかすぎるピンクで着こなせないレベル。真夏の室内で縫製していたら、どんどん退色。できあがったコートは、ちょうどよい薄ピンクになりました。
当初。鮮やかなピンク色のコチニール染めの麻生地(撮影日:2017年10月23日)
縫製当初。染色から1年半経過。暗い場所に保管していたので色は飛んでいない。(撮影日:2019年5月3日)
コート縫製完了。薄ピンク色。真夏だと室内でも退色が激しい。(撮影日:2019年8月3日)
ブルーベリー染めシャツは色が濃くなる
木綿(オックスフォード生地)をブルーベリーの落ち葉で染めてから、ボタンダウンシャツに縫製しました。銅媒染、ディスポン濃染処理ありです。
かなり薄い色に染まりましたが、普通のシャツと同じように使って洗濯するうちに、色が濃くなりました。その後、日光が当たる部分が少し薄くなりました。
染めた時は、とても薄いピンク(撮影日:2017年12月25日)
白い生地(下)と比較したところ。
縫製後(撮影日:2018年1月2日)
使用して4ヵ月後のシャツ。色が濃くなりました。(撮影日:2018年4月15日)
現在は、日光に当たる表地は色が薄くなり、内側は濃いです。(撮影日:2019年5月14日)
※染めた時の話はこちら→ 綿シャツ用の生地をブルーベリー染め
五倍子染めブラウスの退色は汚くない
五倍子で染めたオックスフォード生地のブラウスは、着用、洗濯を繰り返すと、赤みが減って灰色っぽい色になりました。退色しても汚くはなく、服としては着れます。その後、染め直し。染め直した当初は鉄媒染が濃すぎたのか灰色っぽい印象でしたが、数回洗うと赤みが出て紫色になりました。
乾燥染料の五倍子染め木綿ブラウス。(染めた日:2018年6月16日)
着用、洗濯を1年以上繰り返して、紫っぽさが消えて、グレー系の白シャツ。(撮影日:2019年9月20日)
生の五倍子で染め直し。鉄媒染を入れすぎてグレーが強い色。(撮影日:2019年9月21日)
着用後に3回ぐらい中性洗剤(海へ・・・)で洗って、赤みが出て紫に。(撮影日:2019年11月5日)
※染め直しの話はこちら→ 生の五倍子で染め直し
よもぎ染めのお弁当風呂敷の退色
2018年のゴールデンウイークにオックスフォード生地をよもぎ染めしたもの。会社を辞めるまでの7ヶ月、週2回以上は使って、使うたびに洗濯機で洗ってました。明るい黄緑から、落ち着いたカーキグリーンになりました。地味人間なので、今の色のほうが好きです。
染めたときの写真(撮影日:2018年4月29日)
現在の写真。左が使用してきたもの、右が未使用のもの。明るい黄緑から味のあるカーキグリーンになりました。綿なので生地が縮んでます。(撮影日:2019年5月14日)
この薄いカーキグリーンみたいな色は、もう色落ちしない気がします。
その後、ワイルドストロベリーの葉の残液で染め直したのですが、あまり変わりませんでした。(染めた日:2020年4月7日)
玉ねぎ染めエプロンは洗濯で退色
玉ねぎの皮の鉄媒染でオックスフォード生地を染めて、エプロンに縫製。漂白剤も使うような仕事場で使い、使うたびに洗濯機でトップクリアリキッドで洗い、全体的にかなり色は落ち。玉ねぎの皮で染め直しをしたら逆にシミが目だったので、黒染めでリカバリーしました。
玉ねぎの皮(鉄媒染)の木綿エプロン(撮影:2019年5月1日)
退色したタマネギ染めのエプロン(2019年6月6日撮影)
玉ねぎ染め(鉄媒染)で染め直して失敗。シミが汚い状態に。(撮影日:2019年9月11日)
藍染、ヤシャブシ、ヤマモモを重ね掛けして黒に。ポケット増設。シミはうっすら残る。(撮影日:2019年10月30日)
※他の洋服や小物についても、今後、このページに追加していけたらと思います。
草木染め紙の経年変化
2019年版年賀状
牛乳パックのパルプを使って色紙をすき込む形で作った年賀状。
何枚か作った中の1枚を撮影したので、個々の写真は別の紙です。つぎいろマーク(このページのロゴマークの形)だけ、茜と巨峰で違う染料のものになってしまっています。他は同じです。
できあがった時。巨峰で染めた紫の部分は濃い紫色でした。(2018年12月撮影)
ファイルに保管して1年後。巨峰の紫色の赤みが減って灰色っぽくなっている気がします。(2019年12月撮影)
紙に限らず、使わずに暗い場所に保管していると、変化が少ないです。
草木染めの退色変色について思っていること
- 色が変わるところも含めて、草木染めだと思う
- 自分が好きな淡い色や紫色、コットンは退色しやすい
- 販売するとなると、販売時の色を保持することが求められるのが、つまらないと思う
- とはいえ、いい色がしっかり染まるのに越したことはないので、堅牢になる染め方もしていきたい
- 染めてすぐ使わずに少し寝かせておく(枯らす)のは簡単だし、やってもいいかも
※不明点やアドバイスがありましたら、お問い合わせフォームもしくはインスタグラムから、お気軽にお知らせください。