草木染めに塩を使うこと
草木染めに塩を使うという話、聞いたことありますか?
ずっと「なぜ塩なのだろう?」と疑問に思っていたのですが、桜染めのテストをしていて「もしかしたら・・・」と思う理由を思いつきました。
思いついたのですが、あっているかはわからず。知っている方はぜひ教えてください。
目次
塩の存在
草木染めをする中で、塩(しお)という言葉を、いくつかの方向から聞いたことがありました。
紅茶染めやコーヒー染めに塩を使うとか、桜染めの染液に塩を入れるといいとか。あとは、化学染料では色止めに塩を入れる種類の染料があるから、草木染めでも使うの?と聞かれたことがあります。
なぜ塩なのかわからず
「なんで塩なんだろう?」とずっと思っていたものの、特に追究せずにいました。
塩といえばNaCl(塩化ナトリウム)だからナトリウムイオンが媒染になるという意味かな、ぐらいに思っていました。
そんなに身近なもので媒染、色止めできるなら、わざわざミョウバンでアルミ媒染をするという話にならないはず。だから、あんまり効果がなさそう、と判断していました。
また、はじめて桜染めをした際、方法がわからなくて暗中模索していて、「塩を染液に入れるといい」とどこかで見かけました。具体的なことは書いてなくて、塩を入れる理由も書いてなかったと思います。桜と塩なんて、桜の花の塩漬けしか思い浮かびませんでした。漬物の塩は浸透圧による脱水と保存のためですよね。
桜染めの染液に少し塩を入れてみたのですが、特段変化が得られなかったので、たいして追求せず、それ以上何もしませんでした。
藍の生葉染めにも塩を使って水分を揉みだして染める方法があります。
草木染めと水
塩の話とは別の話ですが、「使う水によって染まり方が違う」という話も時々耳にします。その地域その地域の水で違う、軟水と硬水では違う、というような話です。
また、水道水には消毒のためにカルキが含まれるので、その影響もあるかもしれません。
インスタグラムにあがる草木染めの作品を眺めていると、同じ植物でも少し他の人と色あいが違う素敵な色に染まっている人がいて、「水が違うからかも」と思ったりします。(スマホのカメラが違う、という可能性もありますが)
その土地ごとの気候、植物、水や自然があって、その自然の色を染めている、ということなのかと思います。
同じように染めているつもりなのに、同じ色を再現できない、見えないハードルがそこにあります。
自宅で染めた時と、ワークショップ開催場所で染めた時と、同じ東京都内でも若干違うと感じています。何度か自宅でテストして、同じ原料を使って同じ手順で染めたつもりなのに、実際ワークショップでやってみると違う結果になります。
火加減一つで違うのかとも思うのですが、水道水の水源の違い、私が住んでいるのが集合住宅で、そこは一軒家であるという水道設備の違いもあるかもしれません。
アボカド染めについて調べた時も、Rebecca Desnosさんのヒントに、「水でも変わるので、水道水だけでなく、ミネラルウォーター、雨水、海水とか試してみるのもよいかも」というものがありました。でも、そこまでできないと思って、何もせずにいました。
軟水と硬水
水の硬度
日本は軟水とよく言うけれど、地域によって硬度は微妙に違うし、中硬水や硬水の場所も存在するようです。
東京の水道水は軟水(硬度60前後)。沖縄には硬水の場所もあるとか。
地下水の方が河川水などに比べて硬度が高くなるそうです。
水道局のウェブサイトをみると、水源ごとの硬度やpHの資料が載っています。
硬水で染めてみる
水質での違いをテストしてみようと思って、超硬水で有名なコントレックスを桜染めに使ってみました。
シルクが濃いローズピンクに染まりました。桜色パステルカラーではないけれど、黄みはなく、ピンクと呼べる、暗さのある青みのピンク色でした。
重曹を入れた時と似たくすみ方です。でも、重曹と違ってアルカリ性ではなく中性。そのままシルクも染められます。
使ったコントレックスは、1.5リットル入り200円弱でした。3リットル使ったので、2本買って400円弱。高いし、それ以上の量はもったいなくて使えません。コントレックスは硬水の中でも超硬水なので、薄めてもよかったのかも、と後から思いました。
硬水の作り方
「高すぎる、なんかもっと安く作れないのかな」と思って、硬水の作り方を模索。
カルシウムといえば貝殻だけれど、どう溶かすのか。酸で溶かしたら酸性になってしまう。カルシウムといえば石灰もあるけど、アルカリ性になってしまう。
どうやって硬水を作るべきかを調べている中で、にがりを使う硬水の作り方を発見しました。
そこで「あ、塩だ!」と思い浮かびました。点と点がつながって線になった感じです。アボカド染めヒントの海水とも近いし、思い起こすと、何染めの話だったか忘れたのですが、海水を使うとなぜかよく染まる、という話もどこかで読んだことがあります。
「桜染めに塩」って言ってたのは、食卓塩の塩化ナトリウムNaClじゃなくて、あら塩のミネラル分を指しているのかも、とつながりました。粗塩にはナトリウムだけじゃなくて、カルシウムもマグネシウムもカリウムも入っています。
コントレックスの成分は、100ml当たり、カルシウム46.8mg、マグネシウム7.45mg、カリウム0.28mgです。
家にあった、あら塩「瀬戸のほんじお」の成分は、100g当たり、ナトリウム35g、カリウム880mg、マグネシウム300mg、カルシウム160mgです。
塩やにがりを使えば、硬水の代用ができるんじゃないか、と思ったわけです。
水の違いテスト
とりあえず、あら塩と酸化マグネシウムで硬水テストをはじめたところです。
- あら塩「瀬戸のほんじお」を少量・・・あまり差がでなかった
- あら塩「瀬戸のほんじお」を増やす・・・染液が焦げ茶色になった。白濁して色が出ない。
- 酸化マグネシウムの錠剤(下剤)を入れる・・・染液の赤みが出やすかった(くすむ気がする)
「瀬戸のほんじお」の場合、カリウムが多いので、普通のあら塩とはまた違う反応なのかもしれません。伯方の塩はまだ試していません。マグネシウム分が多いのですが、外国の塩が原料です。
※酸化マグネシウムのテストはこちら→ 酸化マグネシウム(便秘薬)で赤みを出すテスト
アボカド染めで、硬度が0に近かったり、pH6.8の水ではうまく染まらなかった、という話を聞きました。
化学染料の場合の塩の意味
化学染料で塩を使う場合の塩は、家なら食卓塩=塩化ナトリウム NaClで、工業的にはボウ硝=硫酸ナトリウム Na₂SO₄。
反応染料の場合、沢山塩を入れると、ナトリウムイオンが染料のマイナスと繊維のマイナスを取り除いて、染料と繊維の親和性が高まって、くっつきやすくなるということのようです。
低温の場合は意味が異なるらしい。この辺りの知識が無さすぎて、よくわかりません。
草木染めは反応染料ではなく媒染染料だし、入れる量も違うので、目的は違うかと思いました。
この辺り、もう少し勉強が必要です。
海晒し
八重山(沖縄の石垣島あたり)には、織った上布(細い麻糸を平織りした上等な麻布)を海でさらす、海晒しというやり方があります。
地色を白くする効果と、色止めの効果があるそうです。紅露(クール。ソメモノイモ)で染めた赤茶はこげ茶に発色。天日干し→海晒し→水洗いして乾燥という工程。
色止めの原理はわかりませんが、海水に色止め効果があるならば、粗塩を水に溶かして海水濃度にすれば、色止めできそうな気もします。
海水や塩水のペーハー
海水の塩分濃度は3.5%程度。海水のpHは弱アルカリ性。
塩製品によってミネラル分の量が違うので、製品や濃度でpHが変わりそうです。
塩水=中性と思い込んでましたが、弱アルカリ性になるなら、重曹をごく少量使うほうが効率的な気もします。
草木染めと塩や水で思うこと
- 雨水を溜めたり、海水や川の水を汲んでみるのも面白いかも
- そんな気持ちで1年以上前に汲んできた湧き水をまだ使っていない
- その時々で違う色が染まる。はてしない。「Aが原因」と感じても「本当の原因はBだった」ということがあり得る
- 地域ならではの染物をしてみたい。東京や関東圏ならではの植物ってあるのかな?
- ミネラルとはいえ金属イオンなので、媒染剤と同じようにキレートになって、染まりにくくならないのか?
※不明点やアドバイスがありましたら、お問い合わせフォームもしくはインスタグラムから、お気軽にお知らせください。