藍染とは何か

藍の花

藍染って「あの紺色のやつ」ということは誰でも知っているけれど、じゃあ何?と掘り下げていくと、いろいろありすぎて、よくわかりません。

私が気になっている点は、「藍染めに本物と偽物があるのか」です。「本物は色落ちしない」と聞いたけれど、その「本物」が何を指しているのか?まではわかりませんでした。

化学建てがニセモノ扱いなのかと漠然と思っていたのですが、本格的な感じの、藍がめで育てるやつにも種類があって「正藍染」なるものもあるそう。その辺りで混乱してきました。

植物由来ではない合成されたインジゴを使うことを偽物とするなら、草木染め的には正しい気がします。

藍染(生葉染めではない、いわゆる普通の藍染)について、思ったこと、耳にしたこと、調べたこと、疑問について書きます。

藍染について見聞きしたこと

藍染が本物か偽物か問題関連

  • インディゴ(インジゴ)には天然のものと、合成のものがある。植物由来か石油系由来かの違い。
  • 本建ての藍染をしている場所でも、藍染体験は化学建てで行っているところがある。
  • 天然藍の製品を販売している場所でも、藍染体験は合成染料インディゴピュアで行っているところがある。
  • 化学建てだとしても、藍の材料は天然藍(インド藍の沈殿藍など)を使うことも多い。
  • 天然染料と合成染料を混ぜたり、重ねたりする場合も結構あるらしい。
  • 本建ての藍染製品は何万円もする。高価。
  • すくもに含まれるインジゴは5%程度。濃色にするには何十回も染め重ねる。
  • 本建てでは一度に濃色にならないため、糊置きしてくっきりした模様を入れるのは難しい。
  • 藍ガメの温度が保てれば、年中藍染は可能らしい。加温しない人もいる。
  • ニオイがあるので、都会では発酵建てはむずかしい(蔵前のマイトは東京23区内でも発酵建てだそう)
  • 藍液を素手で触ることで本物感が出る(天然100%でも、アルカリ性なので手袋をしたほうがいいと思う)

藍染の色落ち

  • 「本物の藍染は色落ちしない」と聞いた。本物とは何を指すのか?なぜ色落ちしないのか?は不明。
  • 普通に安い市販の藍染製品は洗うと色落ちする。ジーパンが買いたてで洗濯すると色が落ちるのと同じ感じ。
  • 洗濯するときに酢を入れると色止めになるらしい。
  • 建染は摩擦に弱い。

藍染の活用

  • 藍は健康に良いらしい。抗菌、虫よけ、紫外線カット、消臭、保温、生地を丈夫にする効能があるらしい。
  • 藍は食べられるけれど、タデ科なので、「蓼食う虫も好き好き」というように、まずいらしい。
  • 藍はヘナのように白髪染めにも使われる。数は少ないがアレルギーの人もいる
  • アルカリ性なので、ウールを染めるのは少し邪道

藍染とは

藍とは

藍草とは、1つの植物の名前ではなく、色素を含む植物の総称。

インド藍(マメ科・インド周辺)、タデ藍(タデ科・日本や中国)、琉球藍(キツネノマゴ科)、大青(アブラナ科・ヨーロッパ周辺)、ウオード(アブラナ科)などが有名で、80種類以上ある。

日本ではタデ藍が主流。タデ藍の中にも、たくさんの種類がある。インド藍は色素量が多い。

藍染の定義

藍を使った染物。英語にすると、Indigo dye。

そこに合成藍も含まれるのか?などの詳細な定義は見当たらない。たぶん含まれると思う。

藍染の原理

加水分解で藍植物にあるインジカン(インディカン)がインドキシルになる

インドキシルは酸化でインジゴになる

インジゴ(水に溶けない)を還元して、水に溶けるロイコ体(インジゴホワイト)にする

ロイコ体(インジゴホワイト)を布に吸着させる

空気に触れて、ロイコ体が酸化されて元のインジゴに戻って布に固着する

藍染めの差別化ポイント

工房や地域によって、たくさんの差別化ポイントがあります。地域による多様性だけでなく、「少しでも使っていれば〇〇と表記してよい」系の商業的な雰囲気を感じます。

当初、「昔ながらの、藍ガメがある伝統的な藍染(本建て)」と、「バケツでできる薬品をつかう藍染(化学建て)」の2種類を区別すればいいのかと思っていたんです。でも、だんだん、それだけではなさそうな気がしてきました。

藍染めの差別化

この辺りを差別化のポイントにしているのかなと思います。

  • 天然藍なのか/合成インジゴなのか
  • 天然藍100%か/合成インジゴ混合か
  • すくも使用か/沈殿藍を使用か
  • 徳島産の「すくも」かどうか
  • 加温するのか/常温か
  • 一から作る時に、灰汁だけか(ふすまをいれるかどうか)
  • 一から建てたものか/完成した藍液を足したものか
  • 化学的なものを一切使わないかどうか(天然のもの100%か)
  • 発酵建て/化学建て
  • 色止め剤を使うかどうか

藍染関連の言葉とその意味

「本建て」「発酵建て」「正藍染」「正藍」「本藍染」など、言葉の定義があまりにもややこしいです。

インジゴ・インディゴ

青藍色の色素の名前。

建てる・建染

水に溶ける状態にして、染色すること。還元反応を利用した染色。藍建ても建染の1つ。

本建て・発酵建て

古来からの方法。藍に含まれる菌、微生物の作用で還元する。地域や藍の種類で手法はさまざま。例えば、すくも、灰汁、ふすま、石灰を使う。ふすまは、発酵を促進するための栄養剤。

化学建て・ハイドロ建て

微生物ではなく、薬品のハイドロで還元する方法。藍染を自宅でやるならこれだと思います。

割建て・混合建て

すくもなどを一度発酵させて、その中に濃度のある合成藍を添加する。短期間に大量に濃色にできる。工業的なものはこれ。

地獄建て・誘い出し

藍建てには一から作る「地獄建て」と、完成している藍液を足して作る「誘い出し」がある。

天然灰汁発酵建て・本藍染

この言葉の定義はよくわからない。たぶん、本建てのことを指しているのだと思う。

同じ工房や販売店で「本藍染」「正藍染」という言葉で書かれた高価な商品と、書かれていない安価な商品があれば、その染め方は何かしら違うはず。

正藍染

この言葉の定義もよくわからない。人間国宝の千葉あやのさんの、宮城県の栗駒町に古くから伝わる技法らしい?

阿波正藍

阿波藍の藍染伝統的技術は「阿波正藍染法」として、徳島県の無形文化財に指定されている。

阿波藍

徳島県の藍染めは、阿波藍を原料にする。徳島のブランド。

武州正藍染

埼玉県の武州地域(羽生市・加須市・行田市)で行われている藍染め。

藍師

藍を染料の「すくも」に加工する職業を営む人。

酢払い、酢洗い

藍染の後処理。藍染の染液はアルカリ性。藍染の後にアルカリになった生地を酸で中和する。中和することで色素が安定する。

あく抜き

藍染の後処理。中性洗剤で洗ったり、一晩水に漬けたり、60~70度のお湯に漬けたりして、灰汁取りをすると色がさえる。灰汁が黄ばみの原因になる。

藍染の色止め剤

藍染め用の色止め剤が売っている。

ハイドロ

化学建てに用いる還元剤。ハイドロサルファイトナトリウム 化学式 Na₂S₂O₄

天然藍

インジゴには天然のものと合成のものがある。植物から採取されたものが天然藍。インジゴ以外の色素も多く含まれるので、深みがある色。

合成インジゴ・合成藍・人造藍

化学薬品アニリンを原料として、化学反応でインジゴを作る。少量で簡単に大量生産できる。

インディゴピュア

合成インジゴ。合成ものは純度が高い。インジゴだけのピュアな色。

インド藍・印度藍

藍の1つ。藍の色素量が多い。すくもより青みが強い。

琉球藍

泥藍に加工して、沖縄の藍染めに使われる。多年草。

すくも(蒅)

藍草を発酵、熟成させたもの。作るのはとても大変。

藍玉

すくもをつき固めたもの。

沈殿藍・泥藍

生葉から作れる。どろっとした青い液。インド藍や琉球藍でよく使う方法。すくもより青みの色に染まる。

藍錠(あいじょう)・藍澱(らんでん)

泥藍を乾燥させた顔料。水分を飛ばして固形にした保存用。顔料。

藍の乾燥葉

藍の葉っぱを乾燥したもの。乾燥葉からも藍染ができる。

藍の顔料作り

藍の葉から藍の顔料も作れる

藍棒

紅型など型染めの彩色に使用する、藍の顔料の塊。墨のように擦って使う。

藍甕(あいがめ)

藍を建てる器。土中に埋める。

藍の種

タデ藍の種を配布している場所も多い。郵便料金だけでもらえたりする。

ジャパンブルー

日本の藍染をジャパン・ブルーと呼ぶらしい。

紺屋

染物屋のこと。江戸時代は藍染が染物の大半だったため。

藍四十八色

濃さによって、藍染の色には様々な名称が付けられている。例えば、薄い色の、「かめのぞき(瓶覗・甕覗)」の由来は、藍瓶に漬けてすぐに引き上げてしまうから覗くだけ、という意味らしい。伝統色で呼ぶと素敵だけれど、色がイメージしにくい。

抜染(ばっせん)

染めた後に色を抜く、脱色する方法。藍染は糊置きするより抜染が向いている。

藍染の材料

本建てにしても化学建てにしても、原理は同じ。微生物で発酵して還元させるか、薬品で還元させるかの違い。液はアルカリ性を保つ。

本建て・発酵建ての材料

地域によって手法、材料はさまざま。藍と、微生物のもとになるものと、アルカリにするものと、発酵を促進する栄養剤となるもの。すくもを使うのが主流で、沈殿藍で発酵させるのはむずかしいらしい。

  • すくも、灰汁(木灰)、ふすま、消石灰
  • すくも、灰汁(木灰)
  • 沈殿藍、水あめまたは日本酒、藍の生葉
  • 藍の生葉、炭酸カリウム、消石灰

化学建て・ハイドロ建ての材料

化学建ての材料は、藍の色素となるものと、アルカリにするものと、還元剤のハイドロが材料。アルカリは重曹でもたくさん入れれば代用できそうな感じ?

  • すくも、ソーダ灰(炭酸ナトリウム)、ハイドロ
  • 沈殿藍、ソーダ灰(炭酸ナトリウム)、ハイドロ
  • 藍の乾燥葉、ソーダ灰(炭酸ナトリウム)、ハイドロ
  • 藍澱、苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)、ハイドロ
  • 合成藍(インジゴピュア)、苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)、ハイドロ

割建て・混合建ての材料

すくもなどを一度発酵させて、その中に濃度のある合成藍を添加する。材料調査中。

藍染セット

簡単に自宅で藍染できるセットが売られている。

  • アナンダの賢い藍染セット(インド藍と化学建ての材料がセットになっている)
  • 田中直染料の天然藍堅ろう染セット(天然藍濃縮液と化学建ての材料がセットになっている)
  • 誠和の紺屋藍(水に紺屋藍と藍溶解剤を入れて藍液を作れる。原料は天然藍)
  • 藍熊染料の大和藍(水で溶かすだけで藍液が作れる)etc

藍染が盛んな場所

藍の収穫量からみると、やっぱり徳島が本場なのかなと感じます。

2007年の藍の収穫量(平成19年産特産農作物生産実績より)

都府県名 収穫量(t) 主産地 主要品種名
北海道 15.00 伊達市
青森県 1.05 青森市 小上粉
兵庫県 4.20 西脇市 小上粉
徳島県 75.00 上板町、石井町、阿波市 小上粉
宮崎県  0.75 三股町
沖縄県 31.60 本部町 琉球藍

沖縄は琉球藍だから別物、別格という感じもします。次は北海道なんですね。気温が低くてもいいものなのかな?

普通の草木染めみたいな藍染め

藍の生葉染め

生葉で染める方法。通常の藍染とは原理が違う。

シルクやウールが染まる。木綿は染まらない(ハイドロとアルカリを使えば染まる)

藍のたたき染め

生葉を布に置いて叩くだけで布が染まる。

藍の紫染め

生葉で紫色に染める方法。紫に限らず、藍から様々な色が染められる。

藍の茎染め

生葉染めで残ったクキは、普通に草木染めするとグレーが染まる。

藍染について思うこと

草木染をしている人でも、藍染だけは専門の人の工房で染めるという話も聞きます。それだけ特別なものなのだと思います。

私自身は、藍の生葉染めは何度かやりましたが、藍染の経験は化学建て3回だけ。発酵建ての藍染の経験はゼロです。

紺色も青も好きな色です。藍染ができたら、他の草木染めと重ね合わせれば色のバリエーションが一気に広がると思うものの、まだ藍染にたどり着けていません。

なぜやっていないかというと、やるなら本場のものを教わりたい、合宿に行きたい、遠い、お金もかかる、というハードルが高いからです。そして、一箇所ではないので、どこに行くべきかわかりません。なんとなく、藍染といえば徳島なのでは?と思っていたものの、人から発酵建て以外にも正藍染というものがあるという話を聞いて、正直、混乱しています。

「本物は色落ちしない」ときいたので、藍染をするならその「本物」をやってみたいという気持ちもあります。「インディゴ色素を固着させる」という建染の染色原理は同じはずなのに、色落ちしないという意味がよくわかりません。ご存じの方は、ぜひ教えてください。

こうやって藍染についてまとめてみると、発酵なんだなとも感じました。「コウジから味噌を作りたい」「麹自体を作ってみたい」みたいな気持ちと「発酵建ての藍染をしてみたい」という気持ちは、似ている気がします。手間暇かかるもの、というのも似ています。

東京近郊で藍染体験に行ってみたい場所としては、川崎市の日本民家園の伝統工芸館です。

※不明点やアドバイスがありましたら、お問い合わせフォームもしくはインスタグラムから、お気軽にお知らせください。