緑茶とリンゴでピンクに草木染め実験
緑茶にりんごの汁を入れて、赤みを出して染める実験をしました。試行錯誤の末、かわいい色、濃染したサラシがオレンジピンクに染まりました。
化学の不思議がいっぱい。理科の自由研究にもよさそうな草木染めです。
作業はシンプルですが、あんばいが難しかったです。やってみた方法を書きます。もし試したら、ぜひ結果を教えてください。
染めた日:2021年1月中旬
※2021年8月:ナシの皮と芯を下の方に追記しました。
目次
実験しようと思った理由
紅茶の色素
紅茶染めをするために紅茶の色素について調べていたら、お茶の葉から紅茶を作る時、酵素の反応で、カテキンが紅茶の色素(テアフラビンやテアルビジン等)になることを知りました。
紅茶染めではシルクを染めると茶色になりやすいと感じたので、フレッシュできたての色素で染めてみたくなりました。
※紅茶染めの話はこちら→ 紅茶染め自由研究
酵素さえあれば、カテキンから紅茶の色素を作れるはず。そう思って実験することにしました。
生成の仕組みは複雑すぎてなんですが、赤みを出して染まる仕組み(目指せ桜染めで桜色ピンク)にもつながる気がして、気になります。
酵素酸化で色を出す方法
色の出し方は、長崎大学大学院医歯薬学総合研究科 天然物化学研究室「紅茶ポリフェノール成分について」を参考にしました。
酵素として、ビワ、リンゴ、ナシ等が使えることがわかっているそうです。(ナシやビワが特に効果的らしい)
今は冬なのでリンゴを使いました。
酵素で褐変といえばアボカド!と思ってアボカドの皮や種も試しましたが、うまくできませんでした。
実験で染まった色
緑茶リンゴ染めの色
シルクはオレンジ、濃染剤した木綿はオレンジピンク。どちらもかわいい色。染めたてなので、時間経過後の変色はまだわかりません。濃染しない木綿は染まりませんでした。
左:シルク 中央:濃染剤の木綿 右:濃染なし木綿
染液の作り方での比較
普通にお茶を淹れるように作るほうが鮮やか。煮出すと茶色っぽさが増しました。
上段:普通に淹れたお茶 下段:煮出したお茶
左:シルク 右:濃染剤した木綿
リンゴ汁と芯での比較
芯や皮を使ったり、リンゴ汁の量を減らすと反応が遅く、時間を置いて染めることに。そのためか茶色っぽさが出ました。染めるタイミングを決めるのがむずかしいです。
上段:リンゴ汁を入れて30分で染めた 下段:リンゴの芯を入れて一晩置いて染めた
左:シルク 中央:濃染剤の木綿 右:濃染なし木綿
緑茶染めとの比較
一晩置いた緑茶はほうじ茶の色。淹れたての緑茶はクリアな薄黄色。それらとは違う色になります。
上段:煮出して一晩置いた緑茶 中段:淹れたて緑茶 下段:今回の染め方
左:シルク 中央:濃染剤の木綿 右:濃染なし木綿
紅茶染めとの比較
シルクは紅茶染めではキャメル系の茶色でしたが、今回の染め方ではオレンジ。紅茶染めは濃染しなかったので比較できませんが、濃染無しの紅茶染めは薄ピンクで、今回の染め方より黄みが少ない色です。
上段:今回の染め方 下段:紅茶染め(アッサム)
左:シルク 中央:濃染剤の木綿 右:濃染なし木綿
全部みょうばんアルミ媒染です。
緑茶&りんご染めの材料
1リットルの染液を作って、サラシ1枚を染めた時の分量です。
- 木綿のサラシ(手ぬぐいサイズ)1枚30g
- 緑茶(家にあった煎茶や番茶) 大さじ2(8g)
- りんご1個半(350g)
- 焼きみょうばん 大さじ2
- 濃染剤(シルクを染める場合は不要)
※濃染剤の詳細はこちら→ 濃染剤カラーアップZBとディスポンについて
緑茶&りんご染めの手順
- 事前準備:木綿は濃染剤で濃染をする(シルクは不要)
- よく水で洗い、生地をお湯につけておく
- 緑茶を淹れて、平たい容器で冷ます(40℃以下)
- りんご(白い実の部分)汁をしぼって、緑茶に入れて混ぜる。
- 液色にオレンジみが出るのを待つ(30分)
- 液を温める(80℃)
- 温かい染液に布を入れて20分。時々動かす。
- 水洗い
- みょうばん媒染液に入れて20分。時々動かす。
- 水洗い
- 再び染液に戻し20分。時々動かす。
- 水洗い
- 自然乾燥
※染める手順は、普段と同じです。基本手順はこちら参照→ 草木染めで布を染める方法:綿・麻・絹
緑茶&りんご染めの写真と詳細
お茶をいれる
スーパーで買った庶民的なお茶(静岡産の煎茶)です。熱湯500mlに対して、茶葉大さじ1(4g)にしました。カテキンが原料なので、出がらしではなく使ってない茶葉を使いました。
お茶を淹れます。500mlの熱湯を沸かして、3つに分けて、3煎目までお茶を入れました。1回3分抽出。熱湯のほうがカテキンが出ます。飲んでみたら、普段淹れるより、ちょっと濃い目ぐらいの濃さでした。
1リットル欲しかったので、新しい茶葉大さじ1で再度同じように抽出。1~3煎目×2回、合計1リットルの緑茶液になります。
※煮出して染液を作るとうまくできなかったので、普通に淹れる方法にしました。
冷ます
熱いと酵素がだめになるので、冷まします。40℃以下になるまで下げました。(冬の室温15℃まで下がると反応が遅くなる感じ)
リンゴ汁を入れて待つ
酵素酸化反応なので、液体が空気に触れる面積を広くしたいので、緑茶は平たい容器に入れます。バットと発泡スチロールトレイを使いました。(写真は既にリンゴ汁を入れた後です)
※少量テストでうまくいったのに、量を増やして深いボールに入れたら反応が進まず失敗しました。
リンゴをおろし金ですりおろします。サンふじりんごを使いました。
ぎゅっと絞って汁だけ使いました。
上の写真は少量テスト時のもの。サラシを染める時は1個半のリンゴをすりました。汁を入れて30分経過後に染められた量です。
テキパキとすって絞って入れる、を繰り返しました。時間が経つとリンゴ自体を変色するのに酵素が使われそうで大急ぎでした。
少し混ぜて、30分置きました。3~10分くらいで緑色が消えて黄色っぽくなり、だんだん、オレンジっぽさのある液色になります。(今回はしませんでしたが、酸化のためによくかき混ぜるといいかも)
30分経過後。くすんだオレンジ寄りの黄色です。このぐらいで染め始めました。ベストタイミング不明。温度や汁の量で変わりそうです。
これは別のテスト時の写真ですが、元の液は緑で、反応後は黄色~オレンジになります。
液を温める
染める前に80℃くらいに加熱。加熱すると酵素反応は終わるはず。加熱で少し赤みが強まりました。
染液に布を入れる
生地は事前に濃染処理をして、お湯に入れて濡らしておきます。(濃染処理をしないならシルクを使うといいです)
温めた染液をバケツに移して、生地を入れて20分。染液が少ないのでよく動かします。終わったら水洗い。思ったより液が黄色かったです。
終わったら水洗い。
アルミ媒染
ミョウバン液を作って、アルミ媒染します。アルミ媒染液の作り方はこちら→ みょうばんアルミ媒染液の作り方
みょうばん液に布を入れると、色が薄く、クリアになる感じがします。
媒染後は、結構かわいいピンクでした。紅生姜みたいな感じ。右下のシルクのハギレも鮮やかオレンジです。
残ったミョウバン液を見ると、黄色っぽくなっていて、布から黄色が流れた気もします。
再度染液に戻す
冷めていたので、液を温め直しました。温め直すと若干液に赤みが出る気もします。布を入れて20分。時々動かします。
できあがり
最後はよく水洗い。なかなかいい感じの、かわいいオレンジピンクでした。
陰干しで自然乾燥しました。なかなかよいピンク。パーソナルカラーの色見本と比べるとイエローベースの春色。右下のハギレはシルクでオレンジです。
※パーソナルカラーについてはこちら→ パーソナルカラーのこと
染色2日後、曇り空自然光だとこんな色です。
試行錯誤した写真と詳細
リンゴの芯を入れた場合
リンゴの芯や皮(食べない部分)を液に入れるだけでもできました。時間がかかるのでタイミングが判断しにくく、染まった色は茶味が出ました。がんばれば調整できそうな気もします。
緑茶液に芯を入れて、一晩置いた状態。
液はオレンジ赤色。赤みが出ています。
皮と芯のミキサー汁
リンゴの皮をミキサーにかけて作ったジュースも試したのですが、黒い液になり、うまくできませんでした。
アボカドの種
一番はじめ、アボカドの種とリンゴの皮を試しました。
一晩置くと、アボカドの液がオレンジだったので「染まるかも!」と思ったんです。リンゴの液の色は薄かったので、ついでに染めただけでした。そうしたら、リンゴの皮の方が布は染まったんです。不思議です。
夏休み実験:緑茶ナシ染め
8月。リンゴの代わりに、ナシの皮と芯を使って、シルクのハギレを染めました。赤みがすぐに出て簡単でした。染まったシルクの色は、リンゴを使う場合と同じでした。
染まった色
オレンジベージュに染まりました。左側にパーソナルカラーの色見本を置きましたが、色がうまく写真に出てない感じがします。
材料
- 緑茶の茶葉 大さじ1
- 食べ終わった後の梨の皮と芯(小さいナシ1個分)
- 焼きみょうばん 大さじ1
- シルクのハギレ 8g程度
手順
梨を食べます。残った皮と芯。
お茶を入れます。500mlの熱湯を沸かして、3つに分けて、3煎目までお茶を入れました。1回3分抽出。
お茶を容器に入れて、氷水を入れた洗面器で冷やしました。冷ましたら29度くらいでした。
冷めてから皮と芯を入れます。
バシャバシャ別の容器に中身を移し替えては戻すのを繰り返して、空気を含めながら10分。だんだん赤くなります。
バシャバシャしながら、3分後。
バシャバシャしながら、6分後。
バシャバシャしながら、10分後。
液に赤みが出たら、皮と芯をこし布でこして、染液を温めます。沸騰より少し手前ぐらい。濡れた状態のシルクを入れます。動かしつつ20分。
水洗いしたら、みょうばん媒染20分
また水洗いして、再度温め直した染液に入れること20分。
水洗い後、濡れた状態のシルクの色。
乾くとオレンジベージュ。枇杷染めの色あいに似ています。
緑茶リンゴ染めで思ったこと
- 皮や芯を利用したい。秋になったら、ナシの皮や芯でチャレンジしたい。→8月にチャレンジ。簡単でうまくいった。
- 紅茶に関連して、フラボノールの変化の勉強になった。他のピンク染めにつなげたい。お茶を混ぜたくなる。
- お茶下地にはまた失敗。豆乳下地だと色がつくのか気になる。
- 色持ちがどうか気になる→半年後、薄くはなったが茶色っぽくなってない
※不明点やアドバイスがありましたら、お問い合わせフォームもしくはインスタグラムから、お気軽にお知らせください。