タンニン下地(五倍子使用)

晒し生地の下地染めのテスト

五倍子(ゴバイシ、フシ)を使ってタンニン下地をした方法と、豆汁下地や濃染剤との違いについて書きます。

木綿や麻などの植物繊維を草木染めする際、シルクとは違い、そのままでは色が入っていかないことが多いです。本当に薄くしか染まらない場合も多々あります。

そんな中、五倍子などタンニンを多く含む植物の場合は、木綿や麻でも普通に色が入っていきます。そういったタンニンを含む染料で薄く染めてから、目的の植物で染めると、単体では色が付かなかったものでも色が入るようになります。

木綿の濃染処理には、豆乳でのたんぱく処理や、市販の濃染剤を使う方法もあります。でも、できたら植物染料だけで染めたい気持ちがあって、そんな時にはタンニン下地です。

下地に使う染料としては、インド流だったらミロバランが使われたり、身近なものではお茶の出がらしが使われたりします。今回は五倍子でタンニン下地をして茜を染めた時の方法について書きます。

※鉄媒染をする場合は、タンニンで暗い色になってしまうので注意です。

タンニン下地と豆汁、濃染剤の色の違い

茜染めでの比較

サラシを茜染めして、比較した結果です。

左から、下処理無し/豆汁下地/豆汁+タンニン下地/タンニン下地/濃染剤の順
上段:茜アルミ媒染 中段:茜アルミ媒染+茜うすい鉄媒染 下段:茜鉄媒染

晒し生地の下地染めのテスト

豆汁よりも、濃染剤よりも、五倍子でタンニン下地したものが濃く染まりました。

豆汁下地をして、さらにタンニン下地をした場合も、ほぼ同じ色でした。タンニン下地をするなら豆汁下地はいらないかな?と思いました。

茜染めの場合、下処理無しでもピンクに染まります。かわいい色です。

鉄媒染を重ねると、あずき色っぽい雰囲気になります。タンニン下地に五倍子を使うので、五倍子の鉄媒染(暗い紫色)の影響が入ります。

下の写真は、五倍子を使ったタンニン下地で木綿(生成)プリペラ生地を茜染めしたものです。

茜染め絞り染め

茜はブータンアカネを使いました。もう少し木綿に色がつかない染料でテストしたほうがわかりやすかったかも。

エンジュ染めでの比較

エンジュ染め(アルミ媒染)で比較しました。すべて木綿サラシです。

左から、濃染剤下地、タンニン下地(このページの方法)、タンニン下地(下地にアルミ媒染無し)、下地無し

エンジュ染め下地の違い

無媒染とほぼ同じ色の2枚は、タンニン下地(五倍子染液を水で薄めて、下地にアルミ媒染無し)と、緑茶下地(下地にアルミ媒染無し)です。この2つは下地に失敗していました。

タンニン下地(このページの方法)が一番濃く、シルクと同じくらい派手な黄色に染まりました。下地時にもアルミ媒染しているので、実質的な媒染回数が増え、その分濃くなった気もします。

※みかんの皮でも五倍子下地がシルクより濃い色でした→ みかん染めテスト

五倍子(ゴバイシ)とは?

五倍子は、ヌルデという木にアブラムシの一種である虫が寄生して、そのためにできた虫こぶ。虫ではなく、植物です。漢方の1つでもあるし、おはぐろ(昔の既婚女性が歯を黒くそめていたやつ)の原料でもあります。

鉄媒染で暗い紫色に染まる染料として使われます。タンニンを多く含むので、タンニンをとる原料にもなっています。

無媒染やアルミ媒染では、とてもうすいベージュ色に発色するため、下地染めに使うことができて、アルミ媒染である限りは、色の影響も少ない感じです。

五倍子を自然から探して手に入れるのは大変ですが、染料店に乾燥染料が売っています。中に入っている、すごく細かくツブツブしているのは虫で、もれなく虫が付いてきます。

乾燥染料の五倍子は灰色。硬いです。

五倍子の染料

生の五倍子は緑色。ぷにぷにしています。

生の五倍子

※生の五倍子で染めた色はこちら→ 生の五倍子で染め直し

タンニン下地染め(五倍子)の材料

  • 木綿プリペラ生地 22g
  • 五倍子(乾燥) 3~4g
  • みょうばん(スーパーで購入した食品用の焼みょうばん)6gくらい

タンニン下地染め(五倍子)の手順

  1. 生地を中性洗剤で洗ってから、お湯(お風呂ぐらいの温度)につけておく
  2. 五倍子を砕く
  3. ステンレス鍋に水2リットルと乾燥五倍子3~4gを入れて、強火。沸騰後20分強めの中火で煮る。
  4. こし布でこす
  5. 染液に布をつける(熱い状態。10分位)
  6. 水洗い
  7. みょうばん媒染液を作る
  8. みょうばん媒染液に布をひたす(常温。15分位)
  9. 水洗い
  10. 再度、染液に布をつける(少し冷めた状態だった。10分位)
  11. 水洗い
  12. (今回は省略したが、余裕があれば一度乾かす)
  13. 以下、通常の染物の手順へ

※草木染めの基本手順で、五倍子のアルミ媒染をする形です。基本手順はこちら→ 草木染めで布を染める方法:綿・麻・絹

※みょうばん媒染液の作り方はこちら→ みょうばんアルミ媒染液の作り方

タンニン下地染め(五倍子)の写真と説明

五倍子の染液の色

五倍子はそんなに量を入れなくてもよいので、砕いて、水から煮ます。乾燥五倍子は硬いので、スリコギや木づちで砕きます。沸騰後20分煮ました。

染液はとても薄い色、黄色っぽい色です。

フシの染液の色

タンニン下地作業

普通の草木染めと同じで、染液に布を浸し、水洗いを挟んで、みょうばんで作ったアルミ媒染液につけて、水洗い。再び染液に戻します。

五倍子染液に入れた木綿生地

あとは普通に草木染め

水洗いしたら、普通に目的の染料で草木染めをします。今回染めたのは、茜染め。タンニン下地をした後に一度乾燥させた方がいいのかもしれませんが、今回は乾燥はしませんでした。

茜染めの作業

参考文献

草木染の絵本という児童書に、タンニン下地のやり方が載っていました。細かい点はアレンジしちゃってますが、大枠はその手順を参考にしました。わかりやすい本でおすすめです。

  • 草木染の絵本 (つくってあそぼう)(編集:山崎和樹、イラスト:川上和生)

タンニン下地染め(五倍子)で思ったこと

  • お茶の出がらし(ダシガラ)を使った下地もやってみたい
  • 五倍子もメジャーな染料なので、それを下地として使うのは贅沢な感じ。五倍子で下地するなら、五倍子染めをすべきでは?という気分にはなる。
  • 茜染めだけでなく、いろいろな染料で試してみたい

※不明点やアドバイスがありましたら、お問い合わせフォームもしくはインスタグラムから、お気軽にお知らせください。