アボカドの色素と、染め方で思うこと

橙色のアボカドの種の中身

アボカドの色素のことと、アボカド染めの方法について考えていることを書きます。

あと、過去に書いたアボカド染めのコツやヒントも、このページにまとめることにしました。

夏休みの自由研究としても、アボカド染め、科学っぽくて面白いテーマだと思います。よい研究結果が出たら、ぜひ私にも教えてください。

アボカドの色素の名前

最近、アボカドの種から取れる色素名を教えてもらいました。その名も、Perseoranginです。アボカドの学名がPersea americanaで、そこからとった名前のようです。色はオレンジ系。黄橙色の固体だそうです。

日本語名はわかりません。(検索しても日本語のサイトがなく、発音を間違えたらなんなので、英語表記にしておきます)

Perseoranginで検索すれば英語の論文が出てくると思います。

Perseorangin: A natural pigment from avocado (Persea americana) seed

引用元:sciencedirect.com

分子式がC29H30O14のグリコシル化ベンゾトロポン含有化合物だそう。無料で見られる画像から推測するに、結構大きくて複雑な形をしているようです。よくあるフラボノイド色素ではなさそうです。

これは単に種の色素についての話なので、草木染めをした時に布に染まった色が、この色素だとは結論できません。

でも、関係がありそうとは思いました。酵素反応があるからです。

アボカドの種の酵素反応

種を空気の存在下で粉砕すると、ポリフェノールオキシダーゼ反応で赤オレンジ色を発色する、と書いてありました。

We have previously reported that avocado (Persea americana) seeds, when crushed in the presence of air, develop a red-orange color in a polyphenol oxidase-dependent reaction.

引用元:sciencedirect.com

この、ポリフェノールオキシターゼ反応(PPO反応)というのは、リンゴを切ると変色したりするやつです。

アボカドの種を切ると、リンゴよりももっとオレンジっぽく変色してきます。

橙色のアボカドの種の中身

アボカドの皮は結構染めやすいのに、種は品種によって染まらないことがある気がしていたのですが、種をスライスした時、変色しないものはダメなのかと思います。(たぶん)

種の周りの薄皮部分だけでも色は出るので、カットせずに丸ごと煮ても染まりますが、色の量が少ない気がします。

私がよく買うアボカドは、カットするとすぐに変色します。でも、別のお店で買ったアボカドで、種の中が白いまま固い感じ(熟していない感じ)がして、うまく染液が作れなかったことがあります。

中が白いアボカドの種

この反応が必要だとするなら、変色を防ぐ行動は避けたほうがいいと思います。よく、変色防止に塩水につけたり、レモン汁をかけたりするけど、それをしたらよくないのかも。どなたか試してみてください。(熱が加わる前の話なので、2番液は別の話かも)

熱処理をすると発色しないので、種が変色する前に煮出し始めてしまうと、色が出ないはずです。そして、空気に触れないと発色しないのだから、細かく砕いたほうがよさそうです。

※追記:しばらく時間を置けば変色する種について、「変色する前に水に入れて煮る」のと、「変色した後に水に入れて煮る」のをテストしたら、あまり差が出ませんでした。その色素と染まる色は違うものなのか、水中で酸化するから問題ないのか。疑問です。また、アボカド染めの方法として「熱湯から煮出す」というものも見かけたので、逆にこのオレンジ色素は出さないほうがいいのか?など疑問だらけです。

変色して、その部分から染まる感じは、枇杷の枝でも感じました。詳細はこちら→ ビワの枝でオレンジピンクを染める

同じ色素ではないかもしれませんが、染液の雰囲気が似ていると思います。

褐変から調べていくと、難しくてよくわからないのですが、紅茶の色素のテアフラビン(theaflavin)、カテキン(catechin)やプロアントシアニジン(proanthocyanidin)で作られるタンニンなど、なんとなく近いのかな?と思うものが出てきます。

追記:重曹を入れる場合

重曹を入れて種を何度も煮ていくと、当初は白かった種の中身が、どんどん黒紫色になっていきます。ボロボロに崩れた部分もその色なので、はじめに酵素で変色しなくても、色素が取れていると感じました。

何度も煮出したアボカドの種

Perseoranginはオレンジ赤なので、ピンクに染まる色素とはまた違うかもしれないし、そこがむずかしいです。

アボカド染めのコツ

※染め方はこちら→ 簡単アボカド食べ染めレシピ
※濃い染液を作って媒染せずに濃く染める方法もあります。(まだ私は成功していません)→ コトコト煮出すアボカド染め
※味のある濃い色に染めた方法はこちら→ アボカド染めの紫っぽさ

アボカド染めで思っていること

  • 染液に赤みが少ない状態で染めると、ベージュに染まる(ストッキングみたいな色)
  • 空気を入れたり、放置して時間を置くと赤みが出やすい
  • 重曹を入れる場合はほんの少し。多いと茶色くなる。
  • 皮を濃く煮出すと、ザツミが出やすい(でも、うまくすると皮の方が濃いピンクがとれるらしい)
  • それに比べると、種は濃く煮出しても、ザツミが出ない(黄色がきれいな感じ)
  • 種を切ったら、オレンジに変色してから煮出したほうがいいかも?
  • 皮も種も、2番液、3番液のほうがキレイな色の染液がとれる
  • キレイな色の染液ができても、時間が経つと茶色くなりがち。途中で差し替えるといいかも
  • はじめキレイな色の染液でも、染めている間に茶色っぽくなると、茶色っぽくなる
  • 薄く染めたほうが、ピンクっぽい感じ。濃染するとレンガ色になる(アルミ媒染の場合)
  • 火加減によっても、とれる染液が違う。鍋の形や水の量が火加減に影響する
  • クリアなピンク色が出るときは、なぜか染液が泡立つ
  • 生地の種類や地の色によっても染まる色は違う
  • 後媒染(染液→媒染→染液)で染める時、媒染前の染液の色より、媒染後の染液の色の影響が大きい気がする
  • 桜染めに似ているけれど、桜染めよりはピンクになりやすい(染料の鮮度の問題?)
  • 水道水でも、水の違いでうまく赤みが出ないかも(これは自分だけでは検証しにくい)

アボカド染めのヒント

Botanical Colour at Your Fingertipsという英語の本に、アボカド染めのやり方が載っているようです。本は読んでないので正しい手順はわかりませんが、著者Rebecca Desnosさんのサイトの、AVOCADO DYEのFAQSにヒントが載っていました。「avocado dye」でGoogle検索すると1番目にヒットしました。

とぼしい英語力で適当に読んだところ、こんなことかなと思いました。間違っていたらごめんなさい。

  • 緑色の部分をよく取り除くと、鮮やかな色になる
  • 弱火、とろ火で煮出す。強火だと茶色くなる
  • 染液の色がどう変わるかを、よく見て、染め時を判断する(その時々で違うから、時間で考えない)
  • 染めるときは急がない。濃くしたかったら長くつけておく
  • 水のペーハーをみてみて、ピンクにしたかったら、重曹などでアルカリにするとよい
  • うまくいかなかったら、違うアボカドも試してみる
  • 生がいちばんよい。次に冷凍保存、次に乾燥保存。
  • 皮は乾かしてもよさそう。種を乾かす時は、数ヶ月にとどめる。
  • 瓶に密封するとかびる。日に干したりして乾かす。
  • さまざまな条件で色は変わる。
  • 水でも変わるので、水道水だけでなく、ミネラルウォーター、雨水、海水とか試してみるのもよいかも
  • 媒染せずにコットンとリネンを染めると、淡いピンクになって、洗っても長持ちする。深みのある色にはならない。

染まった色が自然の色なので、普通にやれば色自体はつくし、アボカド染めです。わかってはいるのですが、ついつい、女性らしい、雑貨や服にもあうような、かわいいピンクを目指して染めたくなってしまいます。

媒染しなくても、木綿や麻が、洗っても長持ちする(it lasts well after washing)と書いてあることに、最近気が付きました。

今まで、「ミョウバンすると黄色っぽくなり、下手すると茶色っぽくなる」という悩みがあって、それを回避するためにクリアな染液を作って染めていました。まだきちんと検証できてませんが、無媒染でも色が保てるなら、無媒染で染めたいです。

他のピンクに染まる色素

似たような色、ピンク~赤茶に染まるものとして、桜染めがあります。染液の雰囲気も似ています。

例えば、桜の色素について調べると、ソメイヨシノや大島桜ではサクラニン、サクラネチンという名前が出てきます。サクラニン(sakuranin)は配糖体で、加水分解でサクラネチン(sakuranetin)になります。フラバノン系のフラボノイドです。

これが桜染めの色なのかはわかりません。がんばって調べても、よくわからないことが多いです。

アボカドの色素がサクラニンと同じような骨格のフラボノイド色素だったらヒントになるかと思ったのに、全然違う形だったので残念です。

赤系の色素だったら、茜染めはアリザリン、コチニールはカルミン酸、ラックはラッカイン酸、ベニノキはアナトーです。そんな風にスッキリしたいです。

スッキリしたかったのですが、その後、お茶について調べたり実験してみて、フラボノイドはそもそも複雑なんだと感じました。複雑なほうが、草木染めらしい感じがします。

※お茶実験の話はこちら→ 緑茶とリンゴでピンクに草木染め実験

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