春コートの手作りで苦労した点

コチニール染めスプリングコート

麻の春コートの縫製が終わりました。洋裁で苦労した部分について書きます。

麻生地は日暮里繊維街で2年前に買いました。ピィネットという訳あり生地のお店です。※生地店のことはこちら→ 日暮里繊維街でおすすめの生地店

生地の色は、草木染めをはじめた頃に何も考えずに染物教室で染めました。今思うと、初心者にコート着丈分の生地を染めさせてくれたなんてすごいことです。※生地を染めた話はこちら→ 麻生地のコチニール染め

作るうちに退色して自然な色になりましたが、当初は派手なピンクでした。染め直しを前提に作ったので、裏地は安く購入した水色のシルク。色の組み合わせが変なので、染め直す予定です。

縫製完成日:2019年7月31日

袖の型紙パターン作り

ドロップショルダーではありませんが、肩がぴったりだと堅苦しい感じになるので、少しだけ下げた位置にしました。

コートの肩

肩を下げれば下げるほど、袖ぐりのイセ分量が多いと、変にギャザーが寄ったような感じになって、見た目がおかしくなります。

その加減がむずかしいなと思いました。

見ごろは立体裁断でパターンを作りましたが、袖は平面で製図して、シーチングで作ってみて調整。アームホールのカーブ、袖山の高さやイセの分量の調整に行ったり来たりして、時間がかかりました。

ミセスのスタイルブックの平面製図をもとに作っていた頃は、「見ごろはこの服で、袖はこの服がいい」と、勝手に組みあわせて作っていて、変なバランスの服になっていました。あの頃、本に書いてある通り、素直に1つの製図通りに作っていれば、もう少しきちんとした服になっていたのかなと思います。

台衿無しのコートの衿作り

男性の服のような、きっちりした衿が好きです。台衿ありの衿では、上手く作れたことがあるので、それを台衿無しで作ってみたいと思いました。

コートの衿

第1ボタンははずして着るので、第1ボタンをはずした状態できちんとした感じにしたいと思いました。開襟シャツみたいに、前立てがペタッと寝転ぶのは嫌でした。

立体裁断で衿を作って、型紙にして、シーチングで試しに作って、調整しました。衿をどの線で身頃とくっつけるのか、その角度などで衿の雰囲気が変わります。

さほど厚みがある生地ではないので、表衿と裏衿は同じ型紙でいいや、と当初は思っていたのですが、シーチングで作ったら衿の内側にシワが寄りました。なので、表衿と裏衿は平面で展開して、別々の型紙にすることにしました。そういう展開も立体で出来たらいいなと思います。できるのかな?

肩線にギャザーが寄ってしまう

肩のいせ込み分量(前身ごろと後見ごろの肩線の差)が多すぎたようです。マチバリでとめて手加減で調整して縫ったら、なんとなくギャザーが寄った出来上がりになりました。かっこ悪いです。

肩線マチバリ

肩のいせ込み

かなり縫い進めた後に、変だと気がついたので、パターンから直すのはやめました。

手縫いでグシ縫い(細かいなみ縫い)して、ひだを寄せて、「縮め縮め」と思いながらアイロンをかけてから、縫い直し。ギャザーが目立たなくなりましたが、微妙に残っています。言われなかったらわからない程度です。

ぐし縫いしてキセかける

肩線のギャザーが寄った部分

この、「アイロンでどうにかする」というワザは、メンドクサイですが、結構使えます。

前端が浮く、ひかえの収まりが悪い

衿や前端など、服の端っこは、縫い合わせた部分の線を裏側に少しずらしてアイロンをかけます。それを「ひかえる」といいます。

その前端のひかえが、いくらアイロンをかけても収まりが悪かったんです。アイロンをかけてクセがついたと思っても、時間が経つと広がってきます。

なんでだろう?と思っていて、何度かやり直した後、伸び止テープのせいだ、と気づきました。

前見頃の前端部分に伸び止めテープを貼っていました。伸び止めテープは、ちょっとだけ縫い目にかぶせるように貼るものなので、縫い代の内側、縫い代ぎりぎりに貼っていました。ミセスのスタイルブックの手順通りです。

見返しの控え部分

ひかえようとすると、アイロンで折り目をつける場所は、ちょうど伸び止めテープの上でした。だから、テープのハリのせいで、アイロンで上手くクセがつかないんだ、ということに気がつきました。

参考にしていたミセスのスタイルブックの手順は、表からステッチをかける手順でした。わたしはステッチは嫌だったので、アイロンだけでなんとかしようとしていて、それが間違いでした。

衿も袖も付けた後だったのですが、なんとかアイロンの熱で伸び止めテープをはがして、新しいテープを位置をずらして貼り直しました。そうしたら、うまくいきました。

ステッチをかけずに前端を浮かないようにする方法、むずかしいです。星止めで手縫いをして、見えないように落ち着かせるのが正しい手順かもしれませんが、そこまではやりたくないです。

初めてのベンツで左右を間違える

初めてベンツにチャレンジしました。

ベンツというのは、コートの後ろ側の、スソにある切れ目のことです。ショートコートなら無くても問題ありません。今まで一度もベンツを作ったことが無かったので、作ってみることにしました。

ベンツは、左右でパターンの形が違います。裏身頃の裏地の左右を間違えて、縫い直ししました。

ここまで縫って、左右の違いに気がつきました。

コートの裏地つけ

下の写真が正しい向きです。

コートのベンツ作り

裏地の布の表は、コートの裏側になります。その、型紙が逆になる(裏返しになる)という事を見逃していました。表地と同じように裁断して左右を縫い合わせたら、左右が逆向きになっていました。

後身頃の型紙の、ベンツ部分。紙を切り貼りして、左右一緒に書き込みました。

ベンツ型紙

幸い、使った裏地は表裏が判別できない布だったので、ほどいて裏面を表面として縫い直しました。もし表裏がはっきりした生地だったら、裁断からやり直しとなり、生地が不足するところでした。

ベンツがない場合、身頃の左右は同じ形になるので、今まで意識していなかった部分です。

この程度の縫い直しミスはよくあります。ミス防止のため、裁断した時に「表右」とか「表左」と書いた紙を貼り付けているのですが、その紙に書いた内容自体が間違っていました。

コートの裾が引きつる感じがする

コートのスソの裏地は、奥まつりにして、動いてもアソビがある感じにします。

ベンツ部分は縫いとめるので、スソが引きつる感じがしました。とりあえずベンツ部分は作っておいて、最後に裾をまつる時にほどき、微調整しました。

ベンツ部分の裾を縫う

フラシといって、裏地のスソを縫いとめないやり方もあります。今まで一度もやったことがないので、次にコートを作るときはやってみたいです。

フラシは、スカートの裏地ではよく見るやり方だと思います。私はスカートを作らないので、やったことがありません。

表地と裏地を縫い合わせる角の部分

裏から縫いあわせて、表に返したらどうなるか考える時、頭が混乱します。

とりあえず表から出来上がりを考えて布をあわせました。

ピンセットで押えて調整

その状態で裏に返して、マチバリでとめて、縫いました。

ベンツ部分の裾処理

表に返してみたところ。ややバランスが悪いです。

ベンツ部分の裾をシュミレーション

裏地を少しひかえたいと思うと、ずらす必要がでてきます。ずらすことによって余った布の分、裾を折り上げたところがたるんだりして、むずかしいです。

この「ひかえる」部分をどうするのか、いちいち頭を悩ませるので、そこまで考えた型紙が作れたらいいなと思います。

襟元の見返しカーブ

裏身頃の衿の部分は、見返しを付けました。中表にして縫い合わせて、ひっくり返しました。

裏身頃の見返し裏

裏身頃の見返し表

裏地部分と見返し部分は、生地を中表にあわせた際、形が違います。そういう形の違う生地を重ねて曲線カーブを縫うのは苦手です。

箱ポケットの失敗

コートのポケットは、箱ポケットが一番使いやすいと思います。でも、作るのはメンドクサイです。身頃が少し引きつっているのは、縫製の腕前が未熟なためです。

箱ポケット

コート作りの最終段階、スソをまつり上げる時に、ポケット袋の底が、裾の縫い代にぶつかることに気がつきました。

仕方が無いので、ぶつかる部分はハサミで切って、縫い直しました。ポケット袋は自分の手の形に作ってあったのに、カットすることで小さくなってしまいました。

ポケット袋の形

ポケットの型紙は、冬コートの型紙を使い回したのですが、春コートは冬コートより丈が短かったんです。身頃の型紙には、箱の部分だけ書き込んで、ポケット袋は書き込まなかったので、丈が不足することに気がつきませんでした。うっかりしました。

※冬コートについてはまだブログに書いていないので、後日書きたいです。

袖の裏地の型紙の間違い

裏地の型紙作りも、ミセスのスタイルブックを参考にしています。

裏地の型紙は、表の型紙をもとに、キセを入れたり、袖口や裾が表地より2センチぐらい上にくるように作ります。

袖の裏地の型紙の作り方は、「セットインスリーブの袖底」と書かれたものを参考にしました。「やけに余裕がある作りだなあ」「合印がずれるなあ」と思っていました。原理をよくわかっていなかったんです。

下の写真は、表地の袖の型紙をもとに、紙を切り貼りして、裏地用の型紙を作ったものです。裏地の出来上がり線は、点線で書きました。袖下がやけに余裕があります。

コートの袖の裏地の型紙

裏地ありの袖のつけ方には2種類あって、表は表で、裏は裏で、別々に身頃と袖を縫い合わせるやり方と、表袖と裏袖を合体させて、あとから身頃に縫いつけるやり方があります。

私がコート作りの参考にした手順は前者の作り方で、裏地の型紙は、後者の作り方の場合でした。

洋裁教室の先生に途中経過を相談していて、袖のつけ方自体が間違っていることが判明しました。

袖底は、裏地の縫い代で縫い代をくるむから、分量が多くなっています。言葉だけだと意味不明です。実際にやってみると、そうだなあと思います。メンドクサイ作り方なので、簡単な洋裁本にはあまり出てこないと思います。

言い訳すると、参考にしていた手順のコートも、袖の種類はセットインスリーブだったんです。だから勘違いしてしまったんです。

春コートの手作りで思ったこと

  • 計画してから2年弱で、ようやく縫製が完了。なにはともあれ、できてよかった。
  • まずは本に書かれた通りに作ってみるのが正しい、とわかっていても、性格上それができない
  • 着心地のいい服を作りたい

縫製後の春コート染め直し

その後、ログウッド(マメ科の木の芯材)の草木染めでコートを染め直し(重ね染め)しました。

染め直し前:表地と裏地の色の組み合わせが変。表の生地よりも内側のピンクが濃い色。

染め直し前の春コート

染め直し後:表地と裏地に違和感なし。多少シワシワ感が出た。薄い青紫、スミレ色。少しピンクが見え隠れする。

染め直し後の春コート

2年前に草木染めした麻生地が、やっとやっと、着れる状態になりました。

春コート染め直し後の修正

コートを着て出かけたものの、ベンツ(後ろの裾の切れ目)部分がなんだか引きつりました。

見ると、裏地のキセも消えてました。染め直すことで、裏地が縮んでしまい、表地と裏地の差が出てしまったようです。

表地(麻)は、生地の段階で草木染めしたので、それが水通し代わりに。一方、裏地(シルク)は、市販の生地を何もせず使ったので、染め直しで縮みました。

裏地を水通ししよう、と思ったことは今までありませんでした。水通しって重要(特に染める場合)と実感しました。

あと、本業でパタンナーをやっていた方に、「後染めの場合は、縦と横でも収縮率も違うから、それを考慮してパターンを作る」というアドバイスをもらいました。自分にはできそうもないけど、なるほど!と思いました。

結局、裏地のスソのまつり処理を全部一度ほどき、やり直ししました。

ベンツをほどいてみたら、1.5cm程度、表裏でずれてました。ずれた状態で表地と裏地を縫い合わせていたので、そこが引きつっていました。

ベンツほどいたところ

ハンガーにつるした状態で違和感のない位置に止めなおして、様子を見ながらキセをいれつつ、手縫いしました。

スソ処理のやりなおし

勉強になりました。

※このコートの、一番下のボタンの位置を決めた話は、こちらの下のほう→ 服を作るときのボタンホールでの失敗

※不明点がありましたら、お問い合わせフォームもしくはインスタグラムから、なんなりと聞いてください。