生葉染めと藍染の原理の違い
青い色素はインディゴで同じですが、生葉染めと普通の藍染が染まる仕組みは全く違います。
普通の藍染(建染め)は、木綿や麻などの植物繊維の方が染まりやすいです。生葉染めは、シルクやウールは染まりますが、木綿や麻はうまく染まりません。
生葉染めでも、ハイドロなどの薬品を使えば木綿や麻も染まるようになりますが、それは、建染めの原理を応用しているだけなので、「生葉染め」ではなくなる感じがします。
生葉染めと藍染の原理の違いと、生葉染めの液色の変化について書きます。
目次
藍の生葉染めの原理
生葉染めの場合、新鮮な生の葉がある時にしかできない原理です。
葉を砕く(細胞を破壊する)と酵素(β-グルコシダーゼ)が活性化する
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酵素によって「インジカン」(透明)が「インドキシル」(透明)になる
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水に溶けた「インドキシル」を布に吸着させる
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酸素があると「インドキシル」が2つ結合して「インディゴ」(青)になり布に固着
- 色:インジカンとインドキシルの色は透明で、インディゴは青。
- 水溶性か:インジカンとインドキシルは水に溶ける。インディゴは水に溶けない。
- インドキシルは、植物繊維(セルロース)への親和性がほとんどない。
藍染の原理
生葉染めで、ソーダ灰+ハイドロなど薬品を使う場合の原理は、藍染の化学建ての原理と同じです。生葉でなくても、乾燥藍でも、インド藍の粉末でも、インディゴ色素があればできる原理です。
「インディゴ」ができるまでの原理は生葉と同じ
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水に溶けない「インディゴ」をハイドロで還元して、水に溶ける「ロイコ体」にする
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「ロイコ体」を布に吸着させる
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空気酸化で、「ロイコ体」が元の「インディゴ」に戻って布に固着する
- 色:インディゴは青。ロイコ体は黄色。
- 水溶性か:インディゴは水に溶けない。ロイコ体はアルカリ性の水には溶けるが、酸性や中性ではインジゴホワイトとなり沈殿する。
- ロイコ体は、植物繊維(セルロース)にも親和性がある。
生葉染め時の液色
液は緑色。「緑色」のものが入っていて液が緑なのと、「黄色」と「青」が混ざって緑に見えるのは意味が違います。
生葉染め液の緑色
生葉染めの液を作ると、はじめは明るい緑色。抹茶みたいな雰囲気。この緑色は、たぶん葉緑素(クロロフィル)の色だと思います。インジカンやインドキシルは無色透明なので、酸化するまで色は見えません。
ミキサーで粉砕して、不織布で絞り、さほど揉まずに作った液です。
10分後。液が少し暗い色になっています。
30分後。濃い緑色の液です。(まだ使える気もしたので、新たに毛糸を入れたところ)
別の液の45分後。(写真を撮り忘れたため)時間が経つと、液の色は黒っぽく見えます。反応が進んで、終わりっぽい感じ。
薬品使用での液色
同様に生葉で液を作り、ソーダ灰を入れると、液は緑っぽいくすんだ紺色。ベースの緑色に、インディゴの青色が重なっているのかと思います。
ハイドロを入れた直後。液は緑っぽい紺色。(布は黄緑色に染まる感じだったけど、待った方がよかったかも?)
ハイドロを入れてから45分後。紺色感が減っている。(元の緑色にロイコ体の黄色が重なった緑?)
生葉染め中の布色
生葉染めの場合は、薄緑色→酸化で水色。
薬品を使うと、黄緑色→酸化で水色。生葉染めに比べて黄色っぽさが強い。
生葉染めや藍染の原理で思うこと
草木染めの本を読みながら染めていると、細かい点で迷うことが多いと感じます。
「〇〇をするためにこの作業をする」というような理由は書いてないこともあって、もやもやします。
「薬品を使う」にしても、「生葉染めで木綿を濃く染めるには薬品を使う」というのは間違ってはいないし、わかりやすいけれど、建染めにしてしまうのは、もったいない気もしました。
オキシドールを生葉染めの最後に使ったりもします。オキシドールも薬品といえば薬品だけれど、使う意味は全く違います。酸化を促進するのかな?他の色素を取り除くのかな?水洗いの前なのか後かで悩みます。
「晴れた日に」とか「天日干し」とか「流水洗い」とか。やり方しかわからないので「なんで?」を考えています。流水は酸化のためですかね?天日干しは他の色素を飛ばすためとかですかね?わかりません。
追加情報
インジカンと酵素(グルコースを切るためのβ-グルコシダーゼ)があれば、生葉でなかったとしても、生葉染めができる。植物ポトスの酵素は代わりに使えるらしい。
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