移住とシカやイノシシ、獣害のこと

田舎に移住したい人は、都会では育てにくい植物や野菜を育てたい、家庭菜園を楽しみたい、本格的に畑をやりたい、という人も多いと思うので、今悩んでいるシカやイノシシのことを書きます。
目次
シカに出会う
住む地域を考える時、獣害については検討しませんでした。岡山市では獣害の話をあまり聞かなかったので、岡山市からもっと田舎に引っ越すと決めた際、思いつきませんでした。
引っ越しを決めてから、「シカやイノシシが車にぶつかって廃車になった人」というのが、知り合いの知り合いレベルで普通に存在する、ということを知りました。夜間に多いそうです。
外出するのが昼間で、普通に平地で生活して1年。話には聞くけれど、シカやイノシシを見たことがありませんでした。
借りた畑で藍を育てていたのですが、畑は柵で囲まれていて、その柵の外側で鹿フンを見ることはあっても、実際の動物を見たことはありませんでした。
山際の古家を使うことにしたのが2023年の初夏。そのそばに、シカとイノシシが住んでいて、出会うようになりました。
外階段の上に古家があるのですが、階段を登ったら古家の目の前に鹿がいたこともあって、びっくりしました。でも、相手の鹿は私よりももっとびっくりした様子で、一目散に逃げていきました。
秋には3日に1回くらいは遠くにシカの姿が見えて、キュンキュン鳴いている声も毎日のように聞きました。
イノシシは2回だけ見ました。2回とも、山側のヤブ、雑草の陰からこちらをのぞき見ている姿でした。思ったより大きくて、突然出会ってしまったら危険かもと感じました。もしかしたらイノブタなのかもしれません。私には違いが判断できないので。
鹿はそんなに怖くないけれど、親子でいる時は親が子どもを守ろうとするので気をつけたほうがいいそうです。
山だからシカやイノシシが住んでいて、後から来たわたしの方が侵入者。そういう立ち位置だと感じました。
イノシシ対策としての草刈り
ヤブがあると身を隠しながら安心して近づけるので、できるだけ草刈りしてヤブを作らないことが大切。ということをイノシシ対策資料で読んで、イノシシと出会ってすぐ、古家の周りを草刈りしました。
見えにくい状態だと、お互い気づかずに近くで出くわしてしまう危険があると思って草刈り。
草刈りした後はイノシシは見かけていません。シカは草刈り後も見かけます。シカがいる話はよく聞くけれど、イノシシはあまり聞いたことがなかったので、この地域には多くないのかも。
植物が鹿に食べられる
古家のシカ被害
シカに会えるなんて素敵、とのんびり構えていたもの束の間。古家のそばに畑を開墾することに決めて、状況が一転しました。
植物や野菜を育てようと思うと、シカやイノシシの獣害問題はやっかいです。
遊び半分に柑橘類の種を食べまきしましたが、時々シカがやってきて、パクっと上の方を食べてしまいます。成長点も食べてしまうので、成長が止まります。

藍の生葉染めに使った後の茎を土に植えると育つのですが、それも上の方をパクっと食べられました。特に芽が好きみたいで、そこで食べられてしまうと育ちません。
秋から開墾のため、秋播きの緑肥(クリムソンクローバー、小麦、ヘアリーベッチ)と、土壌浄化用にスイスチャードの種をまくことにしました。
柵はまだ立ててないので、簡易的に木の間をロープで繋いで開墾エリアを囲ったものの、容易に侵入できてしまい、緑肥の新芽もどんどん食べられてしまい、育ちませんでした。
餌付け状態にならないようにしたいと思うものの、本格的に柵を立てるのは大変です。
発芽温度を考えて種まきを優先しましたが、それは潔くあきらめて、柵を先に立てるべきだったと後から反省しました。
餌付け状態で「ここに食べ物がある」と認識させてしまうのは、狙われやすくなるのでよくないです。
塀のツタも届く位置だけ食べられています。

畑のシカ被害
そして、今まで借りていた畑では、移転のために柵を外しはじめた途端、残っていた野菜が食害にあいました。
ナスは地上部が消えました。左端に見えるイタリアンパセリは無事。

オクラも葉っぱが丸坊主。マリーゴールドは無事。

ダイコンも地上部がまるまる無くなって、輪切り状態。

その後、寒くなってきてジャガイモの地上部が消えました。その周辺にあった雑草のホトケノザも消えました。
11月中旬のジャガイモ畝。やっと少し育った状態でした。周りの雑草はホトケノザ。左端にコンパニオンプランツとして植えていた長ネギが見えます。

その1週間後。ジャガイモの地上部がまるごと無くなりました。白っぽく見えるのは土寄せした土。よく見るとホトケノザも無くなっています。

ネギも一部かじられていて、鹿はネギは食べないはずですが、近くに草があると一緒に食べてしまうらしいです。

鹿が食べない植物
古家の近くに育っている植物=シカが食べない植物なのだと気が付きました。
ツルニチニチソウ。毒があるそうです。キレイですがはびこっていてジャマです。



シダ。

エゴマ。シソに似ています。

ツルニチニチソウ、シダ、エゴマ。この3つの植物が異様に多いです。
あとは、万両、南天。トゲトゲした木、たぶんメギ?
センダンは食べた痕跡を見たけれど、残っている葉も多いので、あまり好きではないのかも。
夏まではササも食べられてなかったので、好きでないのかと思っていたら、ササは冬場の重要な栄養源らしいです。高い部分、届かない場所に生い茂っていたので、もしかしたら下の方は食べられていたのかも。もしくは、冬に備えて食べずに残しておいたのか?
ササ。

あとは、高い木は上部は食べられてません。届かないから。
シカ柵計画
前の畑の柵を外すことになったので、それを移す計画を進めています。
金属の棒を地面に打ち込み、ワイヤーメッシュ(1m x 2mの大きさがある、網目状の金属格子)とネットを張る形です。
高さは1.8mくらい。下側はワイヤーメッシュ、上側はネットだけ。ネットがたわんでしまうと、そこの高さが低くなってしまうので、一定間隔に支柱を立ててピンと張ります。
シカやイノシシは、跳躍力はあっても怪我を回避するため、できるだけ飛び越えることは避けて、くぐり抜けようとするそうです。
畑の柵を見た分には感じてなかったのですが、ホームセンターでワイヤーメッシュを実際に見てみると、1m☓2mの網は大きかったです。大きすぎて車に乗らないと悩みましたが、ホームセンターでは、商品運搬に軽トラを貸し出しているサービスもあるので、それを使えば運搬できます。
軽トラって便利なんだなあ。
ネット通販でもワイヤーメッシュは売っていますが、私が見たものはすべて、店頭受け取りのみ、配達NGでした。配達してもらえるイノシシ柵商品もありましたが、とても高価だし、配送料も高そうな感じがしました。そして階段の上までは運んでもらえなそうです。
電気柵も考えられますが、メンテナンスが重要らしく、こまめにできる自信がありませんでした。
本格的に農業をする人は面積も大きくて対策がかなり高額になるので、地域ぐるみで対策していたり、被害がない地域がいいと思います。対策に補助金が出る場合もあります。
自分でシカ対策してみようと思って初めて、借りた畑にはしっかり柵があって、それがとても恵まれた環境であったことに気が付きました。
マダニや感染症
古家の周りにシカがいる、くらいでは気にしてなかったのですが、ヤブを手刈りで除草したり、鹿のフンを掃除したりすると、マダニが怖いなあと思いました。
マダニが怖いのは刺されること自体よりも、感染症の恐れ。感染症になる確率は低くても、刺されたくないです。
普通のダニと違ってマダニは目に見えるサイズなので、刺されたら刺されたとわかるそうです。
長袖、長ズボン、長靴、首にタオル。軍手の上に作業手袋。不織布マスク。
気にする前は、ハッカ油で作ったスプレーと蚊取り線香でしのいでましたが、草刈り掃除の時は、市販の防虫スプレーも使うことにしました。
肌に直接防虫スプレーをすることに抵抗があるのですが、背に腹はかえられないです。
動物がいなくても、山が近いと虫対策は必須です。
マダニではないけれど、感染症のことを考えると、子どもの頃に受けた予防接種とかワクチンとか、受けていた世代でよかった、と感じました。例えば破傷風とか。自己免疫力だけでは戦えない相手がいる、と田舎にいると感じます。
キッチンハイター
古家にいろいろな残留物がありますが、その中にキッチンハイターもありました。

キッチンハイターが2箇所、別々の場所(屋外)に置いてあって、洗濯をするような場所ではないし、洗濯洗剤は置いてないので、なんでだろう?と不思議でした。最近、害獣対策を調べるようになって、フンは取り除いて漂白剤を散布、と書かれている文献を目にして納得。
見回りして人間がいることを知らせるのも対策の1つになるらしいので、見回りもしています。
ぐるっとまわって、シカフンがあればトングやホウキを使ってチリトリに回収、フンは土に埋めて、フンがあった場所には漂白剤ハイターをスプレー散布しています。トング、ホウキ、チリトリも残留物です。
シカフンを残しておくと、また同じ場所にフンをする気がします。ただ、ハイターの効果があるのかないのか、いまいちわかりません。フンをする位置を変えるだけのような気もします。でもまあ、片付けないでいればシカが安心すると思うので、できるだけ片付けるようにしています。
ロープを張った近くにフンがあることが多くて、畑も柵の外にフンがあったので、障害物があって立ち止まった時にフンをするのかな?という気がします。
草刈りしていて、何個もネットが土に埋もれているのを発見したのですが、たぶん防獣ネットにしていたのかと思います。古くなってボロボロと崩れたプラスチックのトタン板もあり、前の人が防獣に使っていたのではないか?と思いました。
秋冬のシカ
11月後半、植物が少なくなってきた頃。結構近くにいるのに、子鹿が逃げなくなりました。大きめのお母さん鹿の場合は、私を見るとかなり遠くまで退避します。
木の陰から私を見ている小鹿さん。

何を食べているのかまでは見えなかったけれど、こちらを気にせず、植物が少ない中で探して食べている姿を見ると、ひもじいように思えて、悲しい感じがしました。
ジャマな木を切った際、葉っぱがついた枝を放置していると、次の日、食べたような形跡がありました。
トゲトゲした枝を置いたら嫌がってこないかも、と試みたのですが、効果はありませんでした。逆にふだんと違う鳴き声がした時、そのせいで怪我したのでは?と考えてしまったり。
近くに来ては困るのだけれど、増えては困るのだけど、傷つかないでほしいと思う、複雑な気持ちです。
12月、寒くなってきて、姿を見かけなくなり、鳴き声もあまり聞かなくなりました。でも、来ている痕跡はあります。冬は体力を温存しつつ冬眠はしないそうです。
畑の植物を古家の庭に移動して、アスパラガスの根っこはプランターの土の中に埋めたのですが、中に足跡がついていました。

レモングラスやローズマリー、ディル、セージは無事でした。ハーブは好きではないらしいです。
月桃(ゲットウ)は当初食べられてなかったのですが、少しかじった後、後日、大幅にかじられてました。慣れない植物も試食して大丈夫と確認してから食べるのかも?
月桃の植え替え直後。乾燥で丸まっているものの、葉っぱがありました。

シカにかじられた後。

ブルーベリーの木は落葉しはじめたからか今のところ無事です。春になったら食べられてしまうかも。それまでに柵をたてなくては。
シカとイノシシの分布図
どのあたりにシカとイノシシはいるのか?と疑問に思ったので、調べてみました。
全国的に獣害被害はあるのだし、田舎ならどこにでもいるといえばいるのかも。でも、多い地域と少ない地域があって、選べるなら、少ない地域に移住したほうがラクに畑やガーデニングを楽しめると思います。
全国の分布図
環境省の調査資料から引用したニホンジカとイノシシの分布図です。密度ではないので数の多さはこの図ではわかりません。
出典:環境省 全国のニホンジカ及びイノシシの個体数推定及び生息分布調査の結果について(令和2年度)資料3 https://www.env.go.jp/press/109239.html
環境省と農林水産省で10年前からニホンジカとイノシシの捕獲強化対策がとられていて、2023年度末で半減目標の10年なのですが、徐々に数は減っているものの、ニホンジカは半減目標達成は難しい状況です。(2023年9月1日環境省・農林水産省「シカ・イノシシの捕獲強化対策と捕獲目標について」資料より)
関東の分布図
関東では2020年度の密度分布図も出ていたので、それも引用します。これだと数の多さがわかります。こうやってみると、千葉の南側にもいるんだ!と思いました。
関東10都県(茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、山梨県、新潟県及び静岡県)の分布図です。
出典:環境省 関東地方におけるニホンジカの密度分布図の作成について 資料2 https://www.env.go.jp/press/109597.html
色の濃淡と被害は必ずしも一致しないとのこと。増減なども知りたい方は環境省のページを見てみてください。
岡山の分布図
岡山県の資料を引用してみました。エリアで分布に差があります。
出典:岡山県ホームページ 農林水産被害状況等(イノシシ・シカ・サル・カワウ・カラス等) 鳥獣による農林水産被害状況等 https://www.pref.okayama.jp/page/494594.html
ということで、シカとイノシシについて書いてみました。対策がんばります。
※不明点やアドバイスがありましたら、お問い合わせフォームもしくはインスタグラムから、お気軽にお知らせください。