染物屋さんで見学と体験。紺屋めぐり

紺屋めぐりの染物工房で体験

紺屋めぐりは、染物屋を見学したり、染物体験することができるイベントです。

年に一度、10月に2週間あります。工房は東京都新宿区近辺。中井、下落合、高田馬場、早稲田、神楽坂のエリアに点在しています。着物の反物を作る本物の職人さんとお話できる機会も、着物が作られる工房に出入りできる機会もなかなかないので、貴重な体験です。

2018年に初めて行ってみて楽しかったので、2019年にも行きました。一度に全部は見れないので、毎年少しずつ制覇できたらと思います。

見学したり体験した内容を書きます。

紺屋めぐりの情報入手先

どの日に見学や染物体験できるかは、工房によって違います。染の王国・新宿(新宿区染色協議会)のサイトにパンフレットのPDFがあって、スケジュールが載っています。詳細はそちらをご覧ください。「紺屋めぐり」で検索すれば出てくるかと思います。

2週間全部が参加できるわけではなく、工房によって見学・体験が可能な日時が限られています。参加できる人数も限られるので、予約がうまってしまう時もあります。

気になるものがあればパンフレットに記載の連絡先に電話などで問い合わせるのがよいと思います。工房は住宅街にひっそりあったりするので、迷子にならないように注意です。

紺屋めぐりツアーもある

2018年にはじめて紺屋めぐりに行った時は、よくわからなかったので染の小道サポーターのツアーに参加しました。ツアーは無料で、体験費は別途工房で支払います。

10名程度でまわったのですが、参加者のほとんどが外国人観光客でした。なんだか自分も国際交流しながら観光気分になってきて、楽しかったです。東京都内で江戸文化体験といったところ。

ボランティアガイドさんが日本語と英語の両方で案内してくださったので、英語の勉強にもなりました。

金泥で家紋入れ体験

2018年は予約がとれなかった染芸工房隼人の金泥体験に、2019年に初挑戦。巾着に家紋を入れてみました。

三つ盛丸に釘抜紋入り巾着

我が家の家紋ではありません。たくさんの家紋の中から「三つ盛丸に釘抜」という家紋を選びました。かわいいと思ったので。ネットで調べたら、釘抜紋は「苦を抜く」「九城を抜く」という意味で戦国武将が縁起を担いだ家紋です。

金泥で入れた家紋

キンキンキラキラではなく、思った通りの落ち着いた雰囲気になったし、色がにじむことなくできて大満足。2色使っているのがポイントです。

むずかしいところは先生の技なのですが、わたしも頑張りました。

金泥体験

金泥金箔は、お着物や襖絵に使われる技法だそうです。

職人さんの作品を作る心意気を見習って、わたしも自分の作品といえるようなものを作りたいです。

糊屋さん

2018年に、早稲田にある伊藤糊画工房を見学しました。

糸目をひいていく職人さんの工房です。糸目は、染物で色と色の間の白い線になる部分で、糊をひいて色がはみ出るのを防ぐ線です。

友禅染めでは、下絵の線をなぞって、布に糊をひいていきます。チューブチョコでケーキに文字を書くような感じに見えました。

糸目をひいているところ

職人さんには、糸目は脇役だと教えてもらいました。着物の主役は絵であって、線ではないからです。この茶色いタイプの糊(名前を忘れてしまいました)は、細い線になって目立ちません。できあがった際の白線の太さも均一ではなくて、のっぺりしない感じです。

2種類ある糊を見せてもらいました。灰色のほうは、太い線のところに使われていました。

2種類の糊

それ以外にも、一般にはゴム糊というのっぺりした感じになる糊があるようです。もち米で作る糊は食べられるし、かゆくもならないし、炊いて作るそう。

糊のことをもっと知りたい気持ちになりました。

湯のし

2019年には、湯のし屋さん「柳河」を見学しました。高田馬場の駅から結構近い、誠和(染料店)も近い場所です。

湯のし屋さん柳河

「湯のし」というのは、反物に蒸気を当ててシワを伸ばしたり、生地の巾を整える作業のことです。染めあがったものを整えたり、お着物を仕立て直す前に整えたりするそうです。

染物にはいろいろな工程があって、その工程それぞれに専門の職人さんがいて、「湯のし」もその一つです。

湯のし機械。新聞の印刷機械みたいな、クルクル回る機械でした。

湯のしの機械

反物が上を回って送られていきます。染料で染めた反物だけでなく、紅型などの顔料で染めた反物があったり。天然染料(草木染)で染めたものを湯のしすることもあるそうです。

送られていく反物

職人さんが反物の幅にあわせてレバーをくるくる調整したりしてて、かっこよかったです。

湯のしの機械

機械を動かす体験もさせてもらいました。体験料は無料でした。布を送るだけのはずが、要領がうまくつかめず。でも、体験日はこの日の午前中だけ。貴重な体験をさせていただいたので満足です。

反物と反物をつなぐ生地に、しつけ糸を使う場面があったのですが、職人さんの、縫った後に手でプチっと糸を切る所作がかっこいいと思いました。わたしも洋裁するときにやってみたいです。

友禅染め体験

2018年に参加した、手書き友禅体験(色さし)です。

場所は、神楽坂の坂の上あたりの住宅街の中にある「藤彩染色工房」。la kaguの近くです。予約は電子メールでしました。2日前にメールを送るとすぐに簡潔にお返事があり、予約完了。体験費は4000円でした。

フクサの大きさ(大判のハンカチ程度の大きさ)の絹生地に、下絵と糸目・地入れはすでに準備されていて、体験では色さしをします。

糸目済みの絹生地

色つけ後に、蒸したり、洗ったりする工程も工房の方におまかせして、作品は後日郵送されます。

図がらは、数種類の和テイストの中から選ぶことができて、私はアジサイを選びました。和風な絵で絹の布なので、着物を着ない人(私)には使い道がないものかもしれません。

時間は2時間程度でしたが、アジサイは塗る部分が多くて、時間内に終わらない気がして後半あせりました。

インクをお皿にたらして、色を混ぜて思った色を作っていくのですが、青と赤を混ぜて紫になるわけではないそうで、紫は紫のインクがありました。

インクで色を作るお皿

スポイトで水を入れて薄め色にしていきます。水分が多いとにじんで、塗るべき枠線(いとめ)からはみ出ます。そんな時は、糊みたいな透明の液体を入れて調整すると、とろみがでて滲まなくなります。(上の写真の右側の透明の容器)

筆は使いまわさず、1色につき筆を1本使うので、何本も使います。同じ色でも、薄めたら薄めた用の筆を使います。右側の白いお皿に入っているのがゴフンです。ゴフンをまぜると、まったりした色になります。色を塗ったあとに、上にゴフンを置いたりする使い方もできます。

筆と胡粉

薄い色から塗っていきます。薄いピンク、それより少し濃い目のピンク、そこに水分があるうちにゴフンをのせて。性格が出ます。わたしはとっちらかった色になりました。

友禅色つけ絹生地

できあがった作品は、1週間後に届きました。布の右端の色は、色を作る際にテスト的につけた色です。

友禅染め体験で出来上がった作品

糸目(絵の線)から色がはみ出た部分は、金で修正してもらっています。体験のときにもそういう説明があったけれど、手間だったろうなと思いました。

金での修正部分

できた作品をどう使えばよいか使い道に迷いますが、体験ができてよかったです。

色さしを体験してみて、「濃淡をつけて塗ること」や「はみ出ないように気をつかって塗ること」が自分の性格にあってないことを実感しました。

引染の工房で地入れ体験

2018年にツアーで参加したもの。「ふじや染め工房」で地入という下処理の工程を体験しました。体験費500円。

昔ながらの雰囲気のある工房です。

ふじや染工房

職人さんから説明を受けながら、まずは布をぴんと張るために、両端に小さな針のついた竹の棒(しんし)をつけていきます。

この道具を見たことはあったけれど、張るのは初めて。思ったより弾力があって、布の端、ミミ部分が5ミリぐらいしかないので、そこに針を刺すのが難しい。

布を張る工程

そして、ハケで海苔の液をささっと塗る体験。余白なく、液だれしないように、均一に塗ります。ハケの持ち方を習ったのに、後から写真を見ると、教わったとおりに持てていないですね。

海苔を塗る工程

工房の床は土間。垂れた染料が乾燥して粉になると舞い上がって影響するので、水分を吸収する土間のほうがいいそうです。天井も、水滴が落ちないような材質でできているそう。

ふじや染工房の土間

工房の色見本。オーダーで着物を作る際にお客さんが色を指定して、7色の化学染料を組み合わせて色を作り上げていくそう。

ふじや染工房の色見本

私が興味があるのは草木染めだけれども、色を重ねて目的の色を作り上げていくっていう染色も素敵だなと思いました。下の写真が、元となる7つの色。

7つの元となる色見本

一方的な説明ではなくて、質問をして話を聞けて、それが本物の職人さん、というのが嬉しかったです。色を定着させるために蒸すところや、糊を落とすために水洗いする場所も見学しました。

紅型染めの工房見学

こちらも、2018年にツアーで行ったところ。紅型染めの「おかめ工房」です。この工房の雰囲気は、体験スペースだからか染物教室に近い感じ。工房のおかみさんの、ちゃきちゃきした感じの、染めについて熱い説明を聞きました。

型染めの工程説明

南国の鮮やかな沖縄の紅型と比べても、京都の公家文化の染物に比べても、東京の紅型はイキでイナセなシックな色合いだとか。でも、私は十分鮮やかな色あいだと思います。

型染め見本

型染めで絵が描かれた長方形の布は、手ぬぐいではなくて半衿だったりして、染物といえば着物なんだなあと実感しました。

二葉苑の更紗や小紋

ツアーの最後に見学した二葉苑。リノベーションされた近代的な建物の中に昔ながらの工房が組み合わさった、美術館みたいな雰囲気のきれいな建物です。

二葉苑の工房

小紋の説明を初めて聞きました。遠くから見ると無地っぽいのに、近くからみると細かい模様になっているのがイキ。

いろいろな小紋柄

私は着物にまったく興味がないのですが、小紋の生地は模様もよるけれど好みかもしれないです。地味に見えるのに本当は図柄で意味もあるというのがかっこよい感じがします。

模様をつける際に染料がつかないようにするための糊は、もち米系の糊。灰色なのは炭の色。厚みが均一かわかるように色がついているそうです。

もち米系の糊

体験用に糊が置かれた生地(上の写真)や、体験でカラフルに染まった反物(下の写真)を見かけました。
今回のツアーでは見学だけだったので、次回は私もワークショップ体験に参加したいです。

二葉苑の体験用布

染物体験された反物

二葉苑2階のベランダからは妙正寺川が見えます。昔はこの川で糊を洗い流す工程をしていたとか。染めの小道イベントの際に高圧洗浄機で描かれた模様が川沿いに見えました。

妙正寺川の型模様

紺屋めぐりで思ったこと

  • 染色にはいろいろな工程や技法があって、それぞれに職人ワザがあって、すべてを自分ではできない。

  • 防染糊や型紙に興味を持った。型染をやりたくなる。

  • わかりにくい部分はあるけれど、観光用のお仕着せじゃない感じが、おもしろい。

  • 着物もテキスタイルも、描かれた絵画を着ている(普段は意識しないけど)

着物人口の減少に伴って、染物屋さんも減りつつあるそうです。

染物といえば着物という世界。私自身は染物にはすごく興味があるのですが、着物には興味がないので、そこがむずかしいなと感じます。

紺屋めぐり、機会があればぜひ見学や体験に行ってみてください。墨流し染めの工房の話は別途書いています→ 墨流し染め体験でマーブリングなハンカチを染めました