草木染めと精油とハーブ
染織家の方から、精油成分を含む植物を煮出す際は、換気を十分にするようにアドバイスをもらいました。
精油といえば、ハーブや香草。ハーブは料理にも使うし身近な存在ですが、少しなら体に良いものも、大量にとると危険。特にワークショップをする時は煮出す量が増えるし、健康状態は人それぞれなので、注意しなくてはと思いました。
ハーブやスパイス、精油、アロマテラピーという方向から見た場合の草木染めについて、調べたことや考えたことを書きます。
目次
アロマテラピーと草木染め
ハーブ染めをしたら、いい匂いに癒されます。
フレッシュハーブには揮発性の精油成分が含まれています。アロマテラピー(アロマセラピー)とは、芳香療法。精油を使った自然療法のこと。
ハーブ染めをするついでに芳香浴もできて一石二鳥ですが、副作用も考えられるので注意も必要です。
調べてみると、自分がハーブだとは思っていなかった植物でも、精油成分を含む植物が多いと感じました。
精油を含む植物
草木染めにも使いそうで、精油を含む植物には下記のようなものがあります。
ラベンダー、ローズマリー、タイム、月桃、柚子の果皮などかんきつ類の果皮、杉、ヒノキ、ドクダミ、ヨモギ、ユーカリ、セージなど
他にもたくさんあると思います。ハーブやスパイスの香りの元は精油(英語でエッセンシャルオイル)です。
芳香性は精油の特長の1つなので、ニオイが強い植物には精油成分も多いのかと思います。揮発性ではない香り成分もあるので絶対ではありませんが、気を付ける際の目安にはなりそう。
精油の成分と作用、有害性
精油には、薬理作用や有害性があります。
ラベンダー
ラベンダーには、抗うつ、抗炎症など様々な作用がある。主な精油成分は、リナロール、酢酸リナリルなど。皮膚刺激のおそれ、アレルギー皮膚炎のおそれ、眼刺激のおそれ、呼吸器刺激のおそれがある。
ローズマリー
ローズマリーには、脳活性化などの作用がある。主な精油成分は、α‐ピネン、シネオールなど。皮膚刺激のおそれ、アレルギー皮膚炎のおそれ、眼刺激のおそれ、呼吸器刺激のおそれ、子宮収縮作用がある。
タイム
タイムには、痰を取り除く作用、咳を鎮める作用、抗炎症、抗菌、殺菌、抗真菌、発汗などの作用がある。主な精油成分は、チモール、p-シメンなど。皮膚刺激のおそれ、アレルギー皮膚炎のおそれ、呼吸器刺激のおそれ、子宮収縮作用がある。
月桃
月桃には、ストレスや緊張を和らげる作用、消臭、防虫などの効果がある。主な精油成分は、リモネン、カンファ―、p-シメン、α‐ピネン、カンフェンなど。皮膚刺激のおそれ、アレルギー皮膚炎のおそれ、眼刺激のおそれ、呼吸器刺激のおそれがある。
柚子の果皮
柚子には、血行促進や抗ウイルス、抗真菌、殺菌、鎮静などの作用がある。主な精油成分は、リモネン、γ‐テルピネンなど。皮膚刺激のおそれ、アレルギー皮膚炎のおそれ、眼刺激のおそれ、呼吸器刺激のおそれがある。
肌の弱い人が柚子湯でピリピリするのは、リモネンの影響。
杉
杉には、抗ウイルス、抗菌、抗真菌、抗潰瘍、抗酸化、鎮静などの作用がある。主な精油成分は、α‐ピネン、β‐ピネンなど。皮膚刺激のおそれ、アレルギー皮膚炎のおそれ、眼刺激のおそれ、呼吸器刺激のおそれがある。
ヒノキ
ヒノキには、抗ウイルス、抗菌、抗真菌、鎮痛などの作用がある。主な精油成分は、テルピノレン、δ-3-カレン、α‐ピネンなど。皮膚刺激のおそれ、アレルギー皮膚炎のおそれ、眼刺激のおそれ、呼吸器刺激のおそれがある。
ドクダミ
生薬名は十薬。
主な精油成分は、デカノイルアセトアルデヒド、ラウリルアルデヒド。ドクダミ独特の臭いの成分で、殺菌、抗菌作用がある。熱分解するので、煮ているうちにニオイは消えて、染めた布はにおわない。
ドクダミ茶など、生の葉を乾燥させると分解されてニオイが消え、抗菌、殺菌作用もなくなる。健康有害性の情報は見あたらず、調査中。
ヨモギ
ヨモギには、虫よけ、解熱、冷え性改善、消炎などの効果がある。漢方では艾葉(がいよう)といい、止血薬に使われる。主な精油成分はシネオール、α-ツヨンなど。ヨモギ独特のニオイの元は、シネオール。
ツヨンを含むニガヨモギで作れらたリキュール酒「アブサン」は精神かく乱作用があることで有名。ニガヨモギはヨーロッパの物。日本のヨモギにもツヨンは含まれている(どれぐらい含まれているかはわからなかった)ツヨンは、神経毒性の強いケトン類。
セージ
コモンセージにもツヨンが含まれる。アロマテラピーの精油には、ツヨンの含有率が少ないクラリセージが使われる。
煮出すことで起きること
精油成分の揮発
精油成分は揮発性です。
精油(エッセンシャルオイル)の多くは、水蒸気蒸留法で抽出されます。水蒸気蒸留法の原理は、こんな感じです。
釜に植物を詰めて水蒸気を通す → 水蒸気と一緒に精油成分も気化して出る → 冷却して液体になる → 水に油が浮くので分離
ということは、草木染めで植物を煮出した場合も、同じように水蒸気と一緒に精油成分も気体になるので、それに接してしまうと、精油成分の影響を受けてしまうかと思われます。
蒸留器は密閉するけれど、草木染めで煮出す時は鍋にフタをするだけ。換気に気をつけたいと思います。
精油成分の熱分解
加熱によって成分が分解されるものもあります。ドクダミ染めをする場合は、煮ているうちに熱分解されてしまいます。
揮発する前に分解されるのか、そのあたりが定かではありませんが、ドクダミの染液を作った際、フタをしていてもニオイが強いタイミングがあるので、その時は分解する前に揮発しているのかと思います。
精油成分の含有量との関係
では、植物内の精油の含有率はどのくらいなのか。
エッセンシャルオイルはたくさん取れないから高価なわけで、植物そのものには含まれる精油成分の量はさほど多くないはずです。アロマテラピー的に適量の範囲なら、さほど大きな問題ではないはずです。
情報量が多いラベンダーで、ざっくり単純計算してみました。
精油の通常使用量
販売されているエッセンシャルオイルの芳香浴での使用量は3~6滴くらい。精油1滴は0.05mlという目安なので、6滴だったら0.3ml。
ラベンダーの精油の比重は0.882 g/mlなので、0.3ml=0.2646gです。
精油の含有量
精油抽出時の採油率から、含まれる量を計算してみました。
ラベンダーの採油率は0.5~0.9%(いろいろな説があったけれど、だいたいその辺り。品種によってかなり違いそう)
ハーブ染めの本などを読むと、フレッシュハーブを草木染めに使うとしたら、量の目安は布と同程度。100gの布を染めるとしたら、100gのハーブを煮出します。
計算すると、100gのラベンダーからとれる精油は、0.5~0.9g程度。ワークショップの定員6人分(1人100g)では、その6倍になるので、精油の量は3g~5.4gになります。
思ったよりも、アロマテラピーで通常使用する量よりも多い結果になりました。やっぱり換気はしっかりした方がよさそうです。
草木染めとアロマについて思ったこと
植物つながりで、草木染めに興味がある人には、アロマやハーブ、石鹸作りに興味がある人も多いと感じていました。
近い位置にあると感じていたものの、私自身は染色に興味があるだけなので、アロマや精油成分のことは、今まで意識していませんでした。
今回、「精油成分の換気に注意」というアドバイスをいただいたので、その安全性を考えるために精油について調べました。
植物にはいろんな作用があるのだと再認識しました。
※不明点やアドバイスがありましたら、お問い合わせフォームもしくはインスタグラムから、お気軽にお知らせください。